2015 年 68 巻 8 号 p. 552-557
78歳女性.直腸癌の診断で腹腔鏡下低位前方切除術,回腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術後8ヵ月で人工肛門閉鎖を検討したが,注腸検査後に39℃台の発熱と左側腹部痛が出現した.大腸内視鏡検査ではS状結腸から横行結腸まで易出血性粘膜と潰瘍が存在し,下行結腸の狭小化を伴っていた.生検では炎症細胞浸潤,リンパ濾胞の形成および線維化を認めた.以上からdiversion colitisと診断した.salazosulfapyridine坐剤,mesalazineの内服および注腸投与では,結腸の狭小部が残存しており,prednisolone注腸へ治療薬を変更した.開始後2週間での内視鏡検査では下行結腸の狭小化が改善しており,人工肛門閉鎖術を行った.術後は一過性の発熱を認めたが,他に合併症を認めなかった.有症状のdiversion colitisにはステロイド注腸が有効な治療法である可能性が示唆された.