2016 年 69 巻 10 号 p. 499-506
ISR後の排便機能障害は排便回数の増加,便意促迫,便失禁が主なものである.しかしPadの使用は継続されるものの経時的に改善して2年ほどでplateauとなる.排便機能を評価するのに肛門内圧検査が広く用いられているが,測定結果と排便状況の間に乖離がある.
肛門温存直腸切除術は直腸膨大部の除去による便貯留能が低下し,腸内容物の保持が困難になる.ISRは内括約筋の減量による機能的に変化があり,排便異常をきたすことはQOLの低下にもつながる.物理的変化以外にも治療方法も腫瘍存在部位,術前化学・放射線治療,再建方法,術後縫合不全などが生理的機能変化をきたすことが示唆される.
術後の機能障害は手術の適応にもかかわってくるので,的確な評価方法の確立が望まれる.的確な術後機能やQOLを評価することが今後の課題と思われる.