本稿では様々な側面よりISR術後排便機能を論じ,そのポイントを以下に示す.
1.ISR術後のWexnerスコアは長期的にも緩やかに改善する.
2.比較的機能良好な症例は約70%に認められる一方で,10%以下の症例において高度な失禁を認める.
3.排便機能の悪い症例は,術前放射線治療,男性,肛門括約筋の広範囲切除例に多い.
4.粘膜脱や吻合部狭窄は術後の機能に悪影響を及ぼす可能性があり,Delorme手術や臀溝皮弁形成による肛門再建がそれらへの有望な治療方法である.
5.吻合部狭窄の主な原因はその口側腸管の虚血であり,手術手技の改善や術中血流評価でこれを予防しうる.
ISRにおいてはその腫瘍予後が最重要課題であるが,永久人工肛門を回避する選択肢としてその機能予後にも十分配慮した治療選択を行うべきである.
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