2016 年 69 巻 6 号 p. 314-320
症例は80歳男性,排便時出血に対して前医で行った大腸内視鏡検査で直腸S状結腸癌を認め,手術目的で当科入院となった.術前検査で上行結腸にも2型腫瘍を認め開腹右半結腸切除およびハルトマン手術を行った.直腸S状結腸癌は未分化癌,上行結腸癌は高分化~中分化管状腺癌であった.第24病日退院となったが,採血で炎症所見の増悪があり,手術から43日目に当科へ緊急入院した.入院後下腹部に著明な膨隆を認めたため第46病日腹部造影CT検査を行ったところ,骨盤内に巨大な再発腫瘤および多発肝転移を認めた.その後は全身状態が悪化し,化学療法を導入する間もなく手術から73日目に永眠した.大腸癌では極めて稀とされる未分化癌を経験したので,文献的考察を加え報告する.