2017 年 70 巻 2 号 p. 57-63
痔瘻癌手術症例42例の臨床病理と治療成績を検討した.男性40例,女性2例,平均年齢は61.3歳,主な臨床症状は肛門部痛,腫瘤,コロイド排出であった.術前の画像診断としては骨盤MRIが有用であった.痔瘻の隅越分類はIII型・IV型が多く,病悩期間は平均13.5年であった.42例中41例は術前の腰麻下生検で確定診断された.2例は術前治療として放射線治療が施行され,根治手術は直腸切断術が40例,骨盤内臓全摘術が2例であった.術後の病理検査は,粘液腺癌32例,管状型腺癌8例,壁深達度はAが37例,AIが5例,垂直断端は20例(47.6%)で陽性,リンパ節転移は5例(11.9%)であった.病期分類ではstage II 37例(88.1%),stage IIIa 3例(7.1%),stage IV 2例(4.8%)であった.再発は局所再発10例,肺転移が4例であった.全体の5年生存率は83.5%であった.