2017 年 70 巻 5 号 p. 304-309
症例は69歳男性.主訴は下腹部痛.イレウスの診断で入院の上精査を受け,虫垂癌と診断された.術中所見で腹膜播種を認めたため,腹膜播種を伴う虫垂癌に対し回盲部切除術および播種結節切除が行われた.切除標本の病理診断で虫垂杯細胞カルチノイドと診断された.
杯細胞カルチノイドはadenocarcinoidとも呼ばれ神経内分泌腫瘍に分類されていたが,現在,Mixed adenoendocrine carcinoma のsubtypeに分類され,よりadenocarcinomaとしての性質が強調されるようになった.虫垂杯細胞カルチノイドの臨床像は悪性度が高いとの報告が多い.本症例は腹膜播種を伴い,悪性度の高い臨床像を呈していたが,S-1による補助化学療法にて再発なく長期生存している.貴重な症例と考え報告する.