2020 年 73 巻 3 号 p. 133-136
痔瘻は,自覚症状がある患者に肛門指診などを行って診断するが,症状が無く診察で異常が無い段階で痔瘻と診断することは困難である.われわれは,経肛門的超音波検査で偶然確認した触知不能で自覚症状の無い異常所見が,術後40日目に痔瘻へ変化した症例を経験した.症例は29歳男性.主訴は肛門の疼痛.診察で2時方向の肛門周囲膿瘍と診断し,切開排膿術を施行した.疼痛は消失したが排膿が続き,2時方向の低位筋間痔瘻と診断した.経肛門的超音波検査では2時方向の低位筋間痔瘻を認めると同時に10時方向の歯状線近くの括約筋間に小低エコー領域を認めたが痔瘻や膿瘍とは診断できず経過観察で良いと判断した.後日,2時方向の低位筋間痔瘻に対する痔瘻根治手術を施行した.術後40日目に肛門右側方のしこりを訴え,10時方向に低位筋間痔瘻を認め,超音波検査で10時方向の歯状線近くの括約筋間にあった小低エコー領域が低位筋間痔瘻に変化していた.