【目的】直腸低位前方切除症候群(以下LARS)に関する外科医からみた実態を明らかにする.
【方法】16項目のアンケートを作成し,専門施設に回答を依頼した.
【成績】31施設の計43名の習熟した大腸肛門外科医からの回答を得た.低位吻合の症例では,多くの外科医が一時的人工肛門を造設し,排便障害について“元の排便には戻らない”と術前から説明していたが,約10%の医師がLARSのために術後に患者との関係が不良になったと感じており,20%で担当医師の交代や他院への紹介,更に17%で精神科にコンサルトを要し,5%で院内リスク委員会などを経験したと回答した.現状でLARSに関し外科医以外(皮膚排泄ケア認定看護師など)の介入は全体の約3割にとどまっていた.
【結語】外科医が考える以上に患者側の術後排便機能回復に対する期待の大きいことが考えられた.本来の直腸を含めた排便の高次機能を再建腸管が果たせない現状についての患者理解の向上を図ることが医療サイドにおいても肝要である.