日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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74 巻, 7 号
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総説
  • 田中 千恵, 水野 樹, 西村 潤一, 松田 圭二, 村田 幸平, 岡 志郎, 吉田 好雄, 吉田 陽一郎
    2021 年 74 巻 7 号 p. 391-400
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    本稿では,プレフレイル高齢大腸がん患者に対する外科治療について述べる.

    高齢大腸がん患者に対して外科治療を行う際は適切な術前評価と術中評価が重要である.術前の身体機能低下・認知機能低下・低栄養・併存症・多剤併用・骨格筋量の低下は術後合併症や死亡のリスク要因となる.術中は輸液量制限や目標思考型輸液管理に基づいた輸液管理と脳波モニタリングによる厳密な麻酔深度管理を行い,低体温症や皮膚,筋肉,神経,循環障害を予防することが術後合併症の低減につながる.しかし,リスク因子の程度と術後合併症の関連に関する質の高い論文は存在しない.またプレフレイル患者に対して標準治療が困難である場合,手術侵襲の減弱により手術治療が許容されるかどうかに寄与するデータも存在しない.これらの問題点を解決するためには,網羅的な高齢者総合的機能評価のデータの蓄積と解析が必要である.

  • 西村 潤一, 吉田 好雄, 田中 千恵, 松田 圭二, 岡 志郎, 村田 幸平, 水野 樹, 吉田 陽一郎
    2021 年 74 巻 7 号 p. 401-412
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    厚生労働省科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」外科治療ワーキンググループから,プレフレイル高齢大腸がん患者に対する外科治療に関するクリニカルクエスチョン(CQ)を提示,回答(A)・解説を行った.CQ1認知症の高齢の大腸がん患者の場合,誰の承諾があれば治療が可能か?CQ2高齢の早期大腸がん患者に治療は必要か?CQ3高齢の進行大腸がん患者に標準手術は可能か?CQ4高齢のステージIV大腸がん患者の手術適応は?CQ5高齢の大腸がん患者に腹腔鏡下手術は有用か?CQ6高齢患者の直腸がん根治切除術の際に人工肛門を積極的に造設すべきか?CQ7高齢の大腸がん患者の重篤な術後合併症を予測できるか?CQ8高齢の大腸がん患者の術中評価は,出血量・手術時間だけで良いか?CQ9高齢の大腸がん患者に対する適切な麻酔法は何か?本提言を参考にして実診療において治療方針決定に役立てていただきたい.

  • 室伏 景子, 村上 祐司, 牧島 弘和, 森脇 俊和, 佐々木 剛志, 中村 匡希, 福光 延吉, 全田 貞幹, 唐澤 久美子
    2021 年 74 巻 7 号 p. 413-421
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    様々な背景を有する‘高齢者’は個人差が大きく,中でも,プレフレイルな高齢者に対する治療選択は,担当医師や施設の経験に依存する.そのため,放射線治療ワーキンググループを設定し,放射線治療におけるプレフレイル高齢大腸がん患者のための臨床的提言として10のClinical question(CQ)を作成した.本稿では,CQ1~5について提言する.CQ1 プレフレイル高齢大腸がん患者で放射線治療が困難なのはどのような状態か?,CQ2 プレフレイル高齢大腸がん患者の放射線治療で標準治療と治療強度減弱治療の分岐点は何か?,CQ3 高齢がん患者の放射線治療で有用な高齢者機能評価法は何か?,CQ4 プレフレイル高齢大腸がん患者の放射線治療による有害事象において注意すべき点は何か?,CQ5 プレフレイル高齢局所進行下部直腸がん患者の術前化学放射線療法による有害事象において注意すべき点は何か?

  • 室伏 景子, 村上 祐司, 牧島 弘和, 森脇 俊和, 佐々木 剛志, 中村 匡希, 福光 延吉, 全田 貞幹, 唐澤 久美子
    2021 年 74 巻 7 号 p. 422-429
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    プレフレイルな高齢者に対する治療選択は,担当医師や施設の経験に依存する.そのため,放射線治療ワーキンググループを設定し,放射線治療におけるプレフレイル高齢大腸がん患者のための臨床的提言として10のClinical question(CQ)を作成した.本稿では,CQ6~10について提言する.CQ6 R0切除可能なプレフレイル高齢局所進行下部直腸がん患者に対して術前(化学)放射線療法は提言されるか?,CQ7 遠隔転移のない切除不能なプレフレイル高齢局所進行再発直腸がん患者に対する化学放射線療法は提言されるか?,CQ8 プレフレイル高齢大腸がん患者の術後骨盤内再発における緩和的放射線治療の適応は何か?,CQ9 プレフレイル高齢大腸がん患者の肝転移における放射線治療の適応は何か?,CQ10 プレフレイル高齢大腸がん患者の肺転移における放射線治療の適応は何か?

原著
  • 松岡 弘芳, 安野 正道, 高橋 慶一, 船橋 公彦, 斉田 芳久, 板橋 道朗, 松田 圭二, 藤井 正一, 小川 真平, 山田 岳史, ...
    2021 年 74 巻 7 号 p. 430-437
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    【目的】直腸低位前方切除症候群(以下LARS)に関する外科医からみた実態を明らかにする.

    【方法】16項目のアンケートを作成し,専門施設に回答を依頼した.

    【成績】31施設の計43名の習熟した大腸肛門外科医からの回答を得た.低位吻合の症例では,多くの外科医が一時的人工肛門を造設し,排便障害について“元の排便には戻らない”と術前から説明していたが,約10%の医師がLARSのために術後に患者との関係が不良になったと感じており,20%で担当医師の交代や他院への紹介,更に17%で精神科にコンサルトを要し,5%で院内リスク委員会などを経験したと回答した.現状でLARSに関し外科医以外(皮膚排泄ケア認定看護師など)の介入は全体の約3割にとどまっていた.

    【結語】外科医が考える以上に患者側の術後排便機能回復に対する期待の大きいことが考えられた.本来の直腸を含めた排便の高次機能を再建腸管が果たせない現状についての患者理解の向上を図ることが医療サイドにおいても肝要である.

症例報告
  • 橋本 拓造, 白鳥 敏夫, 地原 想太郎
    2021 年 74 巻 7 号 p. 438-444
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー

    壊死型虚血性大腸炎は残存腸管壊死(on-going ischemia:OGI)のリスクがあり,今回OGIをきたした3症例を経験したので報告する.

    症例1は86歳女性.拡大左半結腸切除および結腸瘻造設術を施行するも術後OGIをきたし結腸瘻を含む残存結腸・壊死小腸切除および小腸瘻造設術を施行したが術後短腸症候群にて死亡.症例2は99歳女性.結腸全摘および回腸瘻造設術を施行するも術後OGIをきたしDICにて死亡.症例3は67歳女性.結腸全摘および回腸粘液瘻・空腸瘻造設術を施行.全身状態改善後に腸瘻閉鎖を含む小腸-直腸吻合術を施行し退院となった.

    壊死腸管切除近傍の腸管に粘液瘻を造設し,更に健常腸管で腸瘻を造設する分離型腸瘻造設(divided stoma construction:DSC)は壊死型虚血性大腸炎における外科的治療の1つとして考慮しても良い可能性が考えられた.

編集後記
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