2022 年 75 巻 6 号 p. 273-278
症例は71歳,女性.下腹部痛と血便を主訴に受診した.CT検査で子宮と右尿管への浸潤を伴う直腸癌穿孔+腹腔内膿瘍と診断し,緊急でS状結腸人工肛門造設術を施行した.術前化学療法としてFOLFOX+抗EGFR抗体薬を8サイクル投与し,縮小が得られたため根治術を施行した.低位前方切除術,D3リンパ節郭清術,子宮部分合併切除術を施行したが,病理検査結果ではpathological Complete Responseの診断であった.術後補助化学療法としてsLV5FU2療法を12コース施行した.以後外来にて経過観察中であるが術後20ヵ月現在,無再発生存中である.直腸癌に対する術前化学療法のレジメンや投与期間は様々であり,統一された見解はない.局所進行直腸癌に対するFOLFOX+抗EGFR抗体薬による術前化学療法は著効する症例も認め,直腸癌に対する集学的治療の1つになる可能性があると考えられた.