日本大腸肛門病学会雑誌
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75 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 白水 和雄, 田尻 健亮, 堀尾 卓矢, 亀井 英樹
    2022 年 75 巻 6 号 p. 257-272
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    当科で経験した大腸癌を非重複大腸癌(C群),乳癌重複大腸癌(B群),他癌重複大腸癌(O群)の3群に分類し,重複大腸癌の臨床病理学的特徴を明らかにした.男性での重複癌の臓器は主に胃,前立腺,肺,女性では乳腺,胃,肺であった.大腸癌発症までの平均期間はB群で7年,O群で12年であった.B群はCEA高値で発見され右側結腸癌の頻度が高く,予後は大腸癌のpStageが影響した.一方,O群は高齢で,予後は他癌の悪性度が影響しB群と異なっていた.3群のpStageIVの患者はすべて大腸癌で死亡した.pStage0-IIの大腸癌患者は術後5年以降に二次癌に罹患することが多かった.多変量解析による癌死の独立危険因子はO群,大腸癌のpStageII,IIIであった.重複癌の早期発見,予後改善には二次癌を念頭に置いた適切なサーベイランスが必要である.

症例報告
  • 宮内 俊策, 吉田 亮介, 宇野 太, 山下 和城, 沖田 千佳
    2022 年 75 巻 6 号 p. 273-278
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,女性.下腹部痛と血便を主訴に受診した.CT検査で子宮と右尿管への浸潤を伴う直腸癌穿孔+腹腔内膿瘍と診断し,緊急でS状結腸人工肛門造設術を施行した.術前化学療法としてFOLFOX+抗EGFR抗体薬を8サイクル投与し,縮小が得られたため根治術を施行した.低位前方切除術,D3リンパ節郭清術,子宮部分合併切除術を施行したが,病理検査結果ではpathological Complete Responseの診断であった.術後補助化学療法としてsLV5FU2療法を12コース施行した.以後外来にて経過観察中であるが術後20ヵ月現在,無再発生存中である.直腸癌に対する術前化学療法のレジメンや投与期間は様々であり,統一された見解はない.局所進行直腸癌に対するFOLFOX+抗EGFR抗体薬による術前化学療法は著効する症例も認め,直腸癌に対する集学的治療の1つになる可能性があると考えられた.

  • 平野 昌孝, 井上 彬, 辻 嘉斗, 西沢 佑次郎, 賀川 義規
    2022 年 75 巻 6 号 p. 279-284
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳の女性で,直腸RS癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術,D3郭清を施行した.病理診断はpT3N0M0,pStageIIaであり,術後補助化学療法は施行しなかった.再発なく経過していたが,術後1年6ヵ月頃から不正性器出血を認めた.内診にて膣壁に1cm大の有茎性腫瘤を認め,易出血性であったことから同日局所麻酔下に切除術を施行した.病理組織学的診断は直腸癌の膣転移であった.切除マージンが不十分な可能性を考慮し,全身麻酔下に膣部分切除術を施行した.切除した膣組織には悪性所見を認めなかった.再発リスクを考慮し補助化学療法UFT/LVを開始したが,1サイクル目に薬剤性肝障害が出現し中止した.膣腫瘤切除術後2年8ヵ月無再発生存中である.非常にまれな直腸癌膣転移再発の1例を経験したため報告する.

  • 永野 慎之介, 杢谷 友香子, 廣瀨 創, 吉岡 慎一, 竹田 雅司
    2022 年 75 巻 6 号 p. 285-290
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性で,便通異常を主訴に前医を受診した.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に全周性の2型病変を認め,生検では中分化腺癌が検出された.CT検査では明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めず,同病変に対して腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後病理組織検査では,中分化腺癌と,synaptophsinが陽性,Ki67陽性細胞が80%以上のNET G3を伴う部分を認め,mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm(以下MiNEN)と診断した.高齢であり,術後補助療法を施行せず経過観察の方針とし,術後3年現在,再発なく経過中である.MiNENは予後不良な疾患群であるため,多くの症例は術後補助療法が施行されているのが現状である.術後補助療法を施行せず長期無再発生存中の大腸MiNENの報告はなく,文献的考察を加えて報告する.

  • 黒田 顕慈, 青松 直撥, 福井 康裕, 西居 孝文, 日月 亜紀子, 前田 清
    2022 年 75 巻 6 号 p. 291-296
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は63歳の女性で,cT3N0M0,cStageIIaのS状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後10日目に38℃台の発熱と腹痛が出現し,血液検査でD-ダイマーと肝酵素の上昇を認めた.造影CT検査を施行したところ,門脈左右本幹に造影欠損を認め,門脈血栓症と診断した.初期療法としてヘパリンの持続投与を行い,術後15日目の造影CT検査で門脈血栓が著明に縮小していることを確認した.維持療法としてエドキサバンの内服に切り替え,術後19日目に退院となり,術後1ヵ月に門脈血栓の消失を確認した.近年,大腸癌の腹腔鏡手術後に門脈血栓を併発した症例報告が散見されるが,術後に発熱,腹痛,肝酵素の上昇を認めた場合は,当疾患も想起して診療にあたることが肝要であると考えられた.

  • 小島 正継, 三宅 亨, 植木 智之, 清水 智治, 谷 眞至
    2022 年 75 巻 6 号 p. 297-301
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性.前立腺癌に対して腹腔鏡下前立腺全摘術施行後10日目に気尿が出現し直腸尿道瘻と診断された.膀胱瘻およびS状結腸人工肛門を造設したが自然治癒に至らなかった.薄筋皮弁を用い会陰アプローチによる直腸尿道瘻修復術を施行したが直腸尿道瘻が再燃した.そのため経括約筋的アプローチであるYork-Mason法を施行したところ直腸尿道瘻は閉鎖した.瘻孔再燃のないことを確認し膀胱瘻および人工肛門とも閉鎖したが,直腸尿道瘻の再燃や排尿障害・排便障害を認めなかった.直腸尿道瘻は自然治癒するものもあるが,多くは瘻孔に対する修復術が必要となる.York-Mason法は直腸肛門管を瘻孔と対側である瘢痕のない背側より切開するためアプローチが容易であり,瘻孔を直視下におき瘻孔切除や腸管修復が精緻に可能であるため,直腸尿道瘻に対して有用な術式と考えられた.

  • 池田 純, 下村 克己, 浦田 洋二
    2022 年 75 巻 6 号 p. 302-308
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/30
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,女性.神経線維腫症1型.排便困難・肛門周囲掻痒感を主訴に前医を受診,肛門周囲皮膚病変を伴う直腸癌と胃癌の診断となり手術目的に当院紹介となった.皮膚生検で腺癌のPagetoid spreadと診断した.胃癌・直腸癌とは別に可動性のある腹腔内腫瘤を認め小腸GISTが疑われた.1期手術では会陰部皮膚切除,腹腔鏡下直腸切断術・小腸局所切除術,大腿皮弁による再建術を施行した.病理診断では直腸癌に連続して周囲皮膚にPagetoid spreadがみられ,focalなneuroendocrine differentiationを示していた.小腸腫瘍はGISTであった.2期手術では腹腔鏡下幽門側胃切除術を行った.Pagetoid spreadを伴う直腸癌に胃癌を合併した症例は稀であり,神経線維腫症1型と小腸GISTにこれらが発生した例はさらに希少であるため文献的考察を加え報告する.

第46回日本大腸肛門病学会九州地方会
第26回大腸肛門機能障害研究会
編集後記
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