2024 年 77 巻 2 号 p. 63-69
【目的】
食事の欧米化などにより,比較的まれな疾患であったS状結腸膀胱瘻を診療する機会が増えてきている.従来は開腹での結腸・膀胱部分切除が施行されていたが,近年腹腔鏡での手術も報告されている.当科におけるS状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡下手術の安全性を明らかにする.
【方法】
2011年から2021年までに当科で施行した大腸憩室によるS状結腸膀胱瘻手術16例を対象とし,開腹(9例)と腹腔鏡(7例)手術での治療成績について検討を行った.
【結果】
手術時間および術後膀胱カテーテル留置期間は,両群間で差は認められなかった.一方,腹腔鏡手術では有意に術中出血量が少なく(p<0.01),術後入院日数も短かった(p=0.04).術後合併症は腹腔鏡1例,開腹5例で認めたが,有意差は認めなかった(p=0.09).
【結語】
大腸憩室によるS状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡手術は,低侵襲で安全に施行可能と考えられた.