日本大腸肛門病学会雑誌
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77 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 小菅 誠, 武田 泰裕, 岡本 敦子, 小山 能徹, 中野 貴文, 下山 雄也, 吉岡 聡, 菅野 宏, 大熊 誠尚, 衛藤 謙
    2024 年 77 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    【目的】

    食事の欧米化などにより,比較的まれな疾患であったS状結腸膀胱瘻を診療する機会が増えてきている.従来は開腹での結腸・膀胱部分切除が施行されていたが,近年腹腔鏡での手術も報告されている.当科におけるS状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡下手術の安全性を明らかにする.

    【方法】

    2011年から2021年までに当科で施行した大腸憩室によるS状結腸膀胱瘻手術16例を対象とし,開腹(9例)と腹腔鏡(7例)手術での治療成績について検討を行った.

    【結果】

    手術時間および術後膀胱カテーテル留置期間は,両群間で差は認められなかった.一方,腹腔鏡手術では有意に術中出血量が少なく(p<0.01),術後入院日数も短かった(p=0.04).術後合併症は腹腔鏡1例,開腹5例で認めたが,有意差は認めなかった(p=0.09).

    【結語】

    大腸憩室によるS状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡手術は,低侵襲で安全に施行可能と考えられた.

  • 南角 哲俊, 賀川 弘康, 塩見 明生, 日野 仁嗣, 眞部 祥一, 山岡 雄祐, 前田 周良, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 新井 聡大, ...
    2024 年 77 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー

    【背景】下部直腸癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)に関して,ロボット支援ISR(Ro-ISR)と腹腔鏡下ISR(Lap-ISR)を比較した報告は少ない.【目的】Ro-ISRとLap-ISRの短期成績を比較検討すること.【対象と方法】2005-2020年に,原発性直腸癌に対してISRを施行した101例の短期成績について後方視的に解析を行った.【結果】Ro-ISR群は55例,Lap-ISR群は46例であった.患者背景では,肛門縁から腫瘍下縁までの距離はRo-ISR群3.0cm,Lap-ISR群4.0cm(p<0.01)でRo群の方が短かった.手術時間はRo-ISR群287分,Lap-ISR群320分(p=0.04)でRo群が有意に短く,出血量はRo-ISR群24mL,Lap-ISR群48mL(p=0.01)でRo群が有意に少なかった.【結語】Ro-ISRの短期成績は良好であり有用なアプローチである.

  • 清水口 涼子, 小泉 浩一, 堀口 慎一郎, 髙雄 暁成, 柴田 理美, 夏目 壮一郎, 髙雄 美里, 中野 大輔, 山口 達郎, 川合 一 ...
    2024 年 77 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    【はじめに】直腸神経内分泌腫瘍(NET)において内視鏡治療後の病理組織学的診断で脈管侵襲陽性となった場合,追加切除の検討が必要とされているが,内視鏡治療後の長期予後に関して十分なエビデンスがない.【方法】2005年1月~2021年12月に当院で内視鏡治療をした腫瘍径1cm未満で粘膜下層までにとどまる直腸NET G1患者158例中,脈管侵襲陽性であった44例(27.8%)を対象とし,リンパ節/遠隔転移率,再発/死亡率を検討した.【結果】追加外科切除を12例,経過観察が32例であった.追加外科切除例で2例リンパ節転移が認められ,経過観察例の5例で他病死が認められたが,遠隔転移,再発,原病死はみられなかった.【結語】腫瘍径1cm未満の直腸NET G1における内視鏡治療後の脈管侵襲陽性例では再発,原病死はみられなかった.

臨床研究
  • 榎本 浩也, 諏訪 勝仁, 山澤 海人, 北川 隆洋, 牛込 琢郎, 岡本 友好, 衛藤 謙
    2024 年 77 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    目的:Transanal total mesorectal excision(TaTME)症例におけるdefunctioning stoma(DS)非造設基準を検討した.

    方法:腫瘍下縁が下部直腸に存在し自動吻合器による再建を行ったTaTME症例を対象とし,DS非造設基準をring completeかつリークテスト陰性であった場合とした.手術は全例2チーム同時,吻合はsingle stapling techniqueで行った.吻合部には直視下で16針の追加縫合を行った.主要評価項目を縫合不全とし後方視的に検討した.

    結果:原発癌25例,神経内分泌腫瘍3例,吻合部再発2例を対象とした.25/30例(83.3%)でDSを造設しなかった.DS非造設症例のうち2例で縫合不全を認めた.いずれも男性,糖尿病患者,術後7日目以降の発症であった.骨盤底ドレーン抜去後であり緊急でDS造設を行った.初回DS造設症例のうち1例で縫合不全を認めたが,経肛門的にドレナージを行い保存的に改善した.

    結論:われわれのDS非造設基準では,非造設症例の2/25例(8%)に縫合不全を認めた.より厳格な基準や吻合・補強法などの改善が望まれる.

  • 三枝 直人, 稲葉 剛志
    2024 年 77 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    目的:痔瘻合併がクローン病(CD)患者の実生活に与える影響を明らかにする.

    方法:CD患者を対象にWebアンケートを実施し,痔瘻合併患者30名(痔瘻有群)と非合併患者60名(痔瘻無群)の生活の質(QOL)を簡易炎症性腸疾患質問票(SIBDQ)で,労働生産性を『仕事の生産性及び活動障害に関する質問票』で,比較した.

    結果:痔瘻有群は痔瘻無群に比べ,より若年でより重度のCDを有していたが,就労率は同等であった.SIBDQ総スコアの平均値は痔瘻有群3.9に対し痔瘻無群4.9(P<0.001)であり,痔瘻有群のQOLが有意に低下していた.全労働生産性低下率については平均でそれぞれ57%と38%(P=0.035)と,痔瘻有群の労働生産性は有意に大きく低下していた.

    結論:痔瘻合併は,CD患者の低下しているQOLと労働生産性をさらに低下させる.

症例報告
  • 勝又 健太, 大島 隆一, 内藤 正規, 臼井 創大, 天野 優希, 根岸 宏行, 國場 幸均, 大坪 毅人
    2024 年 77 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    Low-grade Appendiceal Mucinous Neoplasm(LAMN)は虫垂切除術などに伴って指摘されることのある虫垂粘液腫瘍である.今回われわれは3例の虫垂粘液腫患者に対して大腸癌治療ガイドライン2014年版に準じて60ヵ月のサーベイランスを行った.症例1は63歳女性.虫垂腫大を主訴に受診された.虫垂粘液腫疑いとして腹腔鏡下回盲部切除術を行った.症例2は27歳男性.右下腹部痛を主訴に受診,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.症例3は74歳男性.急性虫垂炎に対して保存的加療を施行後,待機的に腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した.いずれも術後病理でLAMNの診断,断端陰性であった.術後60ヵ月までサーベイランスを行い,再発は認めなかった.LAMNのサーベイランス方法や期間に関しては一定の見解が得られていないため,本症例での経験を踏まえて文献的考察を加えて報告する.

  • 丹田 秀樹, 堀 武治, 﨑村 千恵, 天道 正成, 石川 哲郎
    2024 年 77 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    乳癌の他臓器転移の切除例は稀であるが,今回われわれは乳癌大腸転移,心臓転移をきたし,いずれも切除し得た1例を経験したので報告する.症例は76歳女性,主訴は心窩部痛.19年前に右乳癌に対して右乳房全摘術を施行.心窩部痛の精査の大腸内視鏡検査にて横行結腸に全周性の狭窄を認め,生検結果にて乳癌の転移と診断された.胸腹部造影CT検査では右室に造影効果を受ける腫瘤を認め,心臓転移が疑われた.先に大腸腫瘍切除の方針とし,2021年9月に腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施行した.病理組織学的に乳癌の大腸転移と診断された.退院後補助化学療法を開始したが,心臓腫瘍の増大傾向を認め,他院にて2022年1月に右室腫瘍摘出術を施行され,病理組織学的に乳癌の心臓転移と診断された.現在,大腸手術後14ヵ月であるが,無再発生存中である.

  • 小林 千紗, 高津 有紀子, 黒川 耀貴, 伊東 干城, 盛口 佳宏
    2024 年 77 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/25
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    稀な大腸腺扁平上皮癌2例を経験した.症例1は47歳男性,直腸Ra癌の診断で直腸低位前方切除術D3郭清を施行した.病理組織学的検査で腺扁平上皮癌pT3N2bM0 p StageIIIcの診断となった.術後補助化学療法を施行したが,術後9ヵ月目に肺転移,骨盤内再発,左腹壁転移が出現し全身化学療法を開始した.4次治療まで行い術後2年4ヵ月目に永眠した.症例2は66歳男性,横行結腸癌の診断で腹腔鏡下右半結腸切除術D3郭清を施行した.病理組織学的検査では腺扁平上皮癌pT1bN0M0 p StageIと早期癌であったが,術後3ヵ月目に多発肝転移が出現した.全身化学療法を導入したが,治療抵抗性で術後9ヵ月目にBest supportive care(BSC)の方針となった.自験例2例と本邦報告例78例の臨床病理学的特徴の考察を加えて報告する.

第98回大腸癌研究会学術集会
編集後記
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