2024 年 77 巻 4 号 p. 199-204
肛門部嚢胞性病変の頻度は少なく,2011年10月から2023年8月までに,当院で施行した肛門部手術症例2,498例のうち,3例(0.12%)に嚢胞性病変を認めた.年齢は38歳,56歳,69歳であり,すべて男性で,肛門管前方に存在していた.病変は弾性軟で,術前診断は血栓性外痔核または嚢胞であったが,病理組織検査で2例はepidermal cyst,1例は奇形腫と診断した.肛門部における奇形腫はtailgut cystやretrorectal cyst-hamartomaと同様な組織像を示し,総排泄腔の遺残に起因するとされるまれな病変である.基本的には直腸後腔に発生し,肛門周囲に発生した症例はきわめてまれで,本邦では本症例を含めて4例のみ報告されているに過ぎない.それぞれの症例を提示するとともに,肛門部に発生する奇形腫について,文献的考察を加えて報告する.