日本大腸肛門病学会雑誌
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77 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 仕垣 隆浩, 藤吉 健司, 主藤 朝也, 田中 侑哉, 吉田 直裕, 合志 健一, 吉田 武史, 藤田 文彦, 室谷 健太, 赤木 由人
    2024 年 77 巻 4 号 p. 193-198
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    背景

    サルコペニアは,加齢に伴う骨格筋量の減少と筋力を含む全身の運動機能低下と定義され,骨格筋量減少のみ認めるものはプレサルコペニア(PS)と定義されている.今回,75歳以上の高齢者大腸癌手術症例を対象に,PSの臨床的特徴について後方視的に解析を行った.

    結果

    高齢者大腸癌症例131例のうち,33例がPS群に,98例が非PS群に層別化された.手術時間と出血量は両群間で差はなかったが,術後合併症はPS群で多かった(P=0.051).また,PS群はAlb値が低く,CRP-Alb比(CAR)は高い傾向にあった(Alb:P=0.069,CAR:P=0.069).さらにPS群は好中球-リンパ球比(NLR)が高値であった(P=0.002).

    結語

    高齢者大腸癌のPS手術症例は,術後合併症の発生が多い傾向にあった.術前にPSを診断することで,術後合併症ハイリスク群のスクリーニングとして有用となる可能性が示唆された.また,高齢者大腸癌のPS手術症例はCARやNLRなどの術前炎症関連因子との関連も示唆された.

症例報告
  • 田中 香織, 森 俊治, 山田 英貴, 森 秀樹
    2024 年 77 巻 4 号 p. 199-204
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    肛門部嚢胞性病変の頻度は少なく,2011年10月から2023年8月までに,当院で施行した肛門部手術症例2,498例のうち,3例(0.12%)に嚢胞性病変を認めた.年齢は38歳,56歳,69歳であり,すべて男性で,肛門管前方に存在していた.病変は弾性軟で,術前診断は血栓性外痔核または嚢胞であったが,病理組織検査で2例はepidermal cyst,1例は奇形腫と診断した.肛門部における奇形腫はtailgut cystやretrorectal cyst-hamartomaと同様な組織像を示し,総排泄腔の遺残に起因するとされるまれな病変である.基本的には直腸後腔に発生し,肛門周囲に発生した症例はきわめてまれで,本邦では本症例を含めて4例のみ報告されているに過ぎない.それぞれの症例を提示するとともに,肛門部に発生する奇形腫について,文献的考察を加えて報告する.

  • 髙田 直樹, 小菅 誠, 会澤 大介, 岡本 敦子, 中野 貴文, 今泉 佑太, 菅野 宏, 武田 泰裕, 大熊 誠尚, 衛藤 謙
    2024 年 77 巻 4 号 p. 205-210
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    症例は74歳男性.嘔吐,腹痛を主訴に近医受診し,腹部CT検査で回腸末端部に石灰化を伴う35mm大の腫瘤性病変とその口側小腸の拡張を認めた.受診4年前の腹部CT検査で腫瘤を指摘されていたが本人の希望で精査していなかった.腫瘤は4年間増大傾向を認めていなかったが,腸閉塞をきたしていたため,腸管拡張改善後に待機的に手術を行った.悪性腫瘍の可能性も否定できなかったため,手術は周囲小腸間膜リンパ節郭清を含めた腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.切除検体の肉眼所見は被膜を有する黄色充実性病変で内部には石灰化を伴っていた.病理組織学的検査では回腸末端領域の固有筋層内を主座とする40×35×32mmの結節病変で,免疫組織化学的にはdesmin陽性,α-SMA陽性,c-kit陰性であり,平滑筋腫の診断であった.術後経過は良好で第7病日に退院となった.術後1年を経過し,平滑筋腫の再発は認めていない.

  • 内田 史武, 森山 正章, 小山 正三朗, 渋谷 亜矢子, 和田 英雄, 黨 和夫
    2024 年 77 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    症例は82歳の女性で,腹痛のため前医を受診し,虚血性腸炎の診断で緊急入院した.翌日腹痛の増強があり,腹部造影CTで結腸の広範な壊死が疑われ,当院に転院搬送となった.来院時バイタルサインは安定し,腹部全体に筋性防御を伴う圧痛を認めた.腹部造影CTでは全結腸が造影効果不良で腹水を伴っており,腸間膜血管の血栓は認めなかった.全結腸壊死型虚血性大腸炎と診断し,緊急手術を行った.腹部正中切開で開腹し,上行結腸からS状結腸までの壊死を認めた.結腸全摘を行い,回腸による単孔式人工肛門を造設した.術後38日目に自宅に退院した.虚血性大腸炎は一過性形・狭窄型・壊死型の3型に分類される.壊死型虚血性大腸炎は頻度が低く,その中でも全結腸壊死型は致死率が高く,予後不良である.発症から24時間以上が経過すると救命率が著しく低下するため,本疾患を疑った場合,早急に手術を行うべきである.

  • 舩津屋 拓人, 中川 和也, 石部 敦士, 千田 圭悟, 小澤 真由美, 渡邉 純, 遠藤 格
    2024 年 77 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性.61歳時に胃癌に対して開腹胃全摘術,結腸前経路Roux-en-Y再建法を施行していた.今回は下部消化管内視鏡検査で横行結腸癌と診断され,腹腔鏡下拡大結腸右半切除術を施行した.腫瘍の局在は挙上空腸よりも口側の横行結腸で,肛門側断端距離を10cm以上確保するためには挙上空腸間膜と横行結腸間膜の癒着を剥離し,脾彎曲までの剥離授動が必要であった.挙上空腸間膜の損傷による挙上空腸の血流障害時には再吻合が必要となるため,肛門側断端距離は十分確保できないが,挙上空腸のすぐ背側の横行結腸,腫瘍から肛門側約5cmの位置で腸管を切離し,体腔内吻合とする方針とした.再建は自動縫合器を用いて回腸と横行結腸を端々吻合するデルタ吻合を施行した.術後経過良好で術後11日目に退院となった.胃全摘術後の横行結腸癌の症例では授動範囲が最小限ですむ体腔内吻合が治療の選択肢の1つになると考えられた.

臨床研究
  • 下地 信, 東 博, 宮原 悠三, 山田 恭子, 有田 宗史
    2024 年 77 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー

    はじめに:毛巣洞は殿裂皮下に体毛が嵌入することにより生じる感染性疾患である.標準的治療は手術だが,正中切開閉鎖術後に創離開を生じ創傷治癒が遅延する症例を多く経験する.開放術も創傷治癒に時間がかかり再発症例も認める.当院ではKarydaikis flapを採用し良好な結果を得た.

    方法:2012年から2022年まで毛巣洞20例(正中切開閉鎖術7例,開放術4例,Karydakis flap 9例)において手術時間,創傷治癒期間,創離開,創感染,および再発について検討した.

    結果:正中切開閉鎖術症例は全例に創離開を生じ,創感染および再発を1例認めた.開放術症例では再発を1例認めた.Karydakis flapでは2例が創離開し再発はなかった.手術時間はKarydakis flapが最も長く,治癒期間は最も短かった.

    結語:Karydakis flapは,手術時間は長くなるが,治癒期間短縮と再発減少が期待できる.

第99回大腸癌研究会学術集会
編集後記
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