平時比較的稀な会陰部の刺杭創(杙創)について,2例の自験例を中心に文献的考察を加えて述べる。症例1は8歳女児で校庭の植木の支柱による刺杭創であり,幸い直腸穿孔のみでことなきを得た.症例2は27歳男子で鉄製の椅子の脚による刺杭創で,膀胱・直腸瘻を形成した.刺杭創による腸管損傷について,本邦の報告例について検討すると,1927年に布目が報告して以来症例を加えると27例となり,好発年齢はほぼ外傷年齢である10代と20代に多く,性差は23:3と圧倒的に男性に多かつた.原因物体に関しては,竹による刺杭創が10例と目立った.損傷部位は直腸100%と膀胱88%と高率であり,手術時には特にこの両者への損傷の検索を怠ってはいけない.刺杭創に遭遇した場合には,受傷状況,程度をすばやく把握し,できる限り早期に対処し,むやみに保存療法により時を費すことはあってはならないと思う.