罹患範囲が直腸に限局する直腸炎型,あるいは極く僅かにS字状結腸に及ぶ直腸S字状結腸炎は,潰瘍性大腸炎の10~40%を占め,症状が軽く合併症も少く,自然緩解を起し易いことが知られている.教室の潰瘍性大腸炎症例43例のうち10例(23%)が直腸炎または直腸S字状結腸炎で,いづれも軽症で合併症はなかった.本症の治療には主としてサラゾピリンと,ステロイドの注腸または坐薬が用いられている.教室例の治療成績では,サラゾピリン単独で,臨床的には75%,内視鏡的には69%が緩解し,またサラゾピリンで緩解しなかった3例は,全てステロイド注腸により症状的にも内視鏡的にも緩解した.直腸炎型に対する治療法と予後に関する考察を加えた.