1980 年 33 巻 5 号 p. 471-476,518
直腸に穿孔を伴う骨盤直腸窩痔瘻は深く複雑な瘻管を形成し,全括約筋を貫通し直腸狭窄を伴うことが多いことから,直腸穿孔に気付かず再手術をくり返し再発を起こしている例が多い.
その成因は坐骨直腸窩膿瘍が直腸後方間隙を上行し,直腸内へと自潰することによって生じる.
穿孔部の多くは肛門挙筋上の直腸後壁正中部あるいはやや側方にあるが,肛門挙筋直上に穿孔している例やとくに女性で前側方で穿孔している例もある.
直腸穿孔部はそのまま穿孔している例もあるが,中には直腸筋間をある程度の距離走ってから穿孔しているもの,筋間に膿瘍のプールを作ってから破れているものなども少なくない.
治療は瘻管,とくに直腸後方の瘻管を広く開いて穿孔部を確認し,開放としない部分は十分な掻爬とドレナージを行なう.m.puborectalisは切らずに残しておく.この場合は一時的なcovering colostomyを要することが多い.
人工肛門を置かぬ方法としては上記のように開放したのちm.puborectalis穿孔部に糸をかけておき,外方創の癒合を待って2次的にopenする.最近は括約筋温存術式が採られるようになった.
成績は良好で全例,1回のみで治癒しており,continenceもかなり良好に保たれている.