日本大腸肛門病学会雑誌
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痔瘻再発予防の一観点
鳴海 裕行
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1980 年 33 巻 5 号 p. 477-482,519

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抄録

痔瘻は難治性疾患の一つとして古くから再発度の高いものとされて来た.根治性を高めようとすれば術後の肛門機能が破壊され,術後の肛門機能障害を恐れて十分な切開が行なわれなければ再発をおこすという矛盾を含んでいるからである。
痔瘻の経過をみると,初めに肛門・直腸の周囲に膿瘍が形成され,排膿が自然にあるいは手術的に行われても瘻管が残る,そして瘻管がどこかでふさがるとまた膿瘍をつくるといった病型をくり返す.従って最初'の膿瘍形成時に可及的早期に根治的切開術を行なうのが最も理想的な処置ともいえる.
自験例506例の再発例の大多数は膿瘍形成時に単なる小切開を受け痔瘻を形成したものであった.二次的根治手術を念頭においたとしても,むしろ一次的膿瘍切開術が再発予防の初歩的な方法であることを強調する.

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