1982 年 35 巻 3 号 p. 202-213
直腸肛門内圧測定法による排便機能評価をより明確にする為に,正常成人46例,直腸肛門有疾患患者89例,肛門括約筋の残存する手術後患者75例の計210例に,慶大式microballoonを用いて直腸肛門内圧測定を施行し,以下の結論が得られた.1)肛門管静止圧波形の中のslow waveは,肛門管への交感神経系のdenervationによって生ずるものと考えられた.2)肛門括約筋温存手術後にみられる排便機能異常は,肛門管静止圧の低下および直腸肛門反射の消失などの括約筋機能の低下のみでは十分説明が出来ず,直腸compliance,最大耐容量,continuous relaxation volumeの低下がみられるように直腸貯留能の低下も一因と考えられた.3)術後排便機能を客観的に評価する為に,肛門管静止圧(x),直腸compliance(y)から判別関数f=0.035x+y-5.75を求め,f>0ならばgood,fair,f<0ならばpoorと評価する方法を考案したが,有効な評価法と考えられた.