日本大腸肛門病学会雑誌
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潰瘍性大腸炎患者の粘膜の酵素学的研究
特にN-Acetyl-β-D-Glucosaminidase, β-Glucuronidase, Na-K依存性ATPaseの変動について
小田切 弘人
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1984 年 37 巻 2 号 p. 119-127

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抄録

N-Acetyl-β-D-Glucosaminidase (NAG) およびβ-Glucuronidase (β-Glu.) は, lysosomeに局在するムコ多糖類の代謝酵素である. 潰瘍性大腸炎 (UC) の粘膜でこれらの変動を測定し, その推移を検討した.正常粘膜に比べactiveおよびresolving stageで有意 (p<0.005) な低下を示した.remission stageでは改善傾向にあったが, 完全な回復は認められなかった.さらにNa-K依存性ATPase活性を測定し粘膜の機能的な働きを検討した.active stageで有意 (p<0.005) に低下をしていたが, resolvingそしてremission stageへと改善傾向にあり, remission stageでは, ほぼ完全に正常域に復していた.以上よりrenission stageにあるUCは, 臨床的内視鏡的および組織学的に緩解したかにみえても, lysosomeなどの細胞微細構造の機能回復は不完全であり, これらが再発, 増悪の傾向を促し慢性化の原因を造っているものと推察された.しかし水分電解質吸収機能の改善は, ほぼ完全であると思われた.

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