抄録
肛門括約不全に対する遊離横紋筋移植の効果をみる目的で,両性雑種成犬39頭を肛門括約筋の全切除群(S0,n=15),部分切除群(S1/2,n=12),温存群(S1,n=12)に分け,遊離薄筋自家移植をS0の9頭,S1/2の8頭,S1の12頭の計19頭に対して行い,うち14頭には移植2週間前に同筋の除神経を行った.処置前,術中,術直後,術後1カ月,3カ月,6カ月で行った直腸肛門内圧検査では,S0移植群の肛門管内圧は移植直後から低下し,その後回復をみなかったが,S1/2移植群ではS1/2対照群に比して移植後1カ月で肛門管内圧は有意に上昇し,S1移植群では処置前に比して移植後3カ月,6カ月で肛門管長の延長をみた.移植後6カ月時の筋電図検査では,移植筋の自発放電を28頭中20頭に認め,S1移植群の2頭では直腸伸展刺激に呼応する活動電位の増強を認めた.また28頭中5頭に40%以上の移植筋残存を認めたが,生着に対する除神経の効果はみられなかった.