1986 年 39 巻 3 号 p. 213-217
直腸癌の壁深達度とリンパ節転移についてCT所見と病理組織学的所見とを比較した.対象は術前にCT検査を施行し,切除標本と比較検討できた35例で,検査に際してオリーブ油を200~400ml注腸し,60%Conrayを100ml点滴静注した.壁深達度は35例中28例(80%)に正診でき,とくに下部直腸癌では19例中16例(84%)と高い診断率がえられた.誤診例のおおくは浸潤と癒着の鑑別が困難で腫瘤影の範囲を読みすぎた症例であった.一方,壁在リンパ節転移は35例中26例(74%)に正診でき,側方リンパ節転移も17例中15例(88%)に正診できた.リンパ節の質的診断は困難だが,大きさ0.5cm以上を転移陽性として比較的良好な結果がえられた.以上の結果から,CTは壁深達度とリンパ節転移の診断に有用と考えられた.