日本大腸肛門病学会雑誌
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39 巻, 3 号
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  • 特に壁深達度とリンパ節転移について
    神田 裕, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 深田 伸二, 石橋 宏之, 加藤 純爾, 松下 昌裕, 小田 高司, 原川 伊寿
    1986 年 39 巻 3 号 p. 213-217
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌の壁深達度とリンパ節転移についてCT所見と病理組織学的所見とを比較した.対象は術前にCT検査を施行し,切除標本と比較検討できた35例で,検査に際してオリーブ油を200~400ml注腸し,60%Conrayを100ml点滴静注した.壁深達度は35例中28例(80%)に正診でき,とくに下部直腸癌では19例中16例(84%)と高い診断率がえられた.誤診例のおおくは浸潤と癒着の鑑別が困難で腫瘤影の範囲を読みすぎた症例であった.一方,壁在リンパ節転移は35例中26例(74%)に正診でき,側方リンパ節転移も17例中15例(88%)に正診できた.リンパ節の質的診断は困難だが,大きさ0.5cm以上を転移陽性として比較的良好な結果がえられた.以上の結果から,CTは壁深達度とリンパ節転移の診断に有用と考えられた.
  • 石川 正志, 田村 利和, 川人 幹也, 国友 一史, 宇高 英憲, 古味 信彦
    1986 年 39 巻 3 号 p. 218-222
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和50年1月から59年12月までの過去10年間に経験した大腸多発癌14例(同時性多発癌11例(7.1%),異時性多発癌3例(1.9%)),大腸重複癌7例(4.5%)を大腸単発癌132例と比較検討した.性比では多発癌は男:女=10:4であり,重複癌では2:5であり,重複癌では女性に多い傾向が見られた.同時性多発癌では第1癌と第2癌で組織型に差異を認めなかったが,進行癌と早期癌の組み合わせが6例(54.5%)に見られた.またポリープ癌も5例(45.4%)に見られた.一方癌家族歴では大腸多発癌および重複癌では単発癌に比較し,有意差を見なかった.ポリープの併存は単発癌2例(28.6%),多発癌10例(71.4%),重複癌2例(28.6%)と多発癌に著しく高率に見られ,大腸多発癌ではポリープの癌化率が高いと推察された.一方重複癌7例の他臓器癌の部位は胃2例,乳房2例,子宮2例,前立腺1例であった.
  • 沢田 寿仁, 小林 和生, 北村 隆信, 池永 達雄, 中嶋 邦彦, 中山 年正, 北村 元仕
    1986 年 39 巻 3 号 p. 223-231
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    日常一般に行なわれている血液成分の多変量解析が大腸癌のスクリーニング法として有効,有用かの検討を行なった.
    変数増加法による多変量管理図法を用いて大腸癌を検出するのに有効な変数,つまり,検査項目を求めた結果,大腸癌の判別には『CEA』,『Hb』,『Alb-α2-Glob』の三者の組み合せが有効であることがわかった.この三者を用いてマハラノビス汎距離より大腸癌判別式(D2)を求めた.その結果,D2≧7.81が陽性=大腸癌と判別される.
    この大腸癌判別式を用いた検証結果は大腸癌(D2<7.81,CEA≧5の6例を含む)66.1%,健常者,4.1%,胃癌,36.1%,肺癌,55.6%,注腸造影検査症例(大腸癌除く)34.0%の陽性率を示した.つまり,スクリーニングの母集団(この場合は健常者)の陽性率が4.1%,偽陰性率が33.9%,偽陽性率が34.0%であり,これは便潜血テストの結果に匹敵し,スクリーニング法として有効,有用であることを表している.
    今後はスクリーニングの母集団を病院外来レベルまで広げ検証を行なう必要があると考える.
  • 山田 哲司, 山脇 優, 橋爪 泰夫, 笠原 善郎, 中島 久幸, 森 善裕, 川浦 幸光, 岩 喬
    1986 年 39 巻 3 号 p. 232-236
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌細胞に癌特異抗原が存在するか否かを明らかにするため,手術切除大腸癌組織より抗原の抽出を行い免疫学的検討を行った.抗原の抽出はKurata法により不溶性リポタンパクを抽出し,0.2%DOCにて可溶化,ゲル濾過にて部分精製した後,モルモットに免疫し抗血清を得た.この抗血清を適当に稀釈し,酸素抗体法により免疫学的検討を行ったところ,18種類の正常組織,15種類の胎児組織には存在しない大腸癌抗原が存在した,またこの抗原は大腸癌には共通して存在するが,10種類の他臓器癌には存在しなかった.
    以上より大腸癌細胞には腫瘍関連抗原が存在すると考えられた.
  • 摘出標本の検討
    永澤 康滋, 森 克彦
    1986 年 39 巻 3 号 p. 237-246
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    下部大腸癌切除標本14例(下行結腸癌1例,S状結腸癌8例,直腸癌Rs 1例,Ra 2例,Rb 1例)の下腸間膜静脈造影を行い壁深達度と静脈変形について検討した.
    静脈変形71所見のうち直接所見(壁不整,狭小,欠損,閉塞)は腫瘍周囲隆起部に29.6%,近接腸管膜側部に21.1%,間接所見(集中,直線化,屈曲,圧排,ラセン状,念珠状)は周囲上下2~3cmの範囲で21.1%の出現をみた.
    壁深達度と静脈所見の関係では腫瘍周囲隆起部と近接腸管膜側部のss a1の範囲で直接所見が各々19.7%,15.5%の出現をみた.
    壁深達度診断には腸管壁へ分布する静脈を3群に分けて検討すると,腫瘍による直接変化は1次分技にss a1~s a2の範囲で18.2%,si ai,では100%に出現し,2次分枝の所見はss a1~s a2の範囲で81.8%の出現率であった.静脈の読影でも壁深達度診断は可能であり,術前診断にも応用できる.
  • 辻本 志朗
    1986 年 39 巻 3 号 p. 247-256
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1~4年の長期にわたり経過の観察された潰瘍性大腸炎(UC)20症例の大腸生検材料を対象とし,その組織像からcrypt上皮障害の指標であるgoblet cell depletion (GCD),好中球および好酸球浸潤,粘膜再生などの変化を中心に組織学的病期や病型分類を行った.併せてUCの病態の特徴や予後および組織発生などについても検討した.
    UCは組織学的に浸出期,肉芽期,回復期,寛解期の4病期に,また浮腫型(E型)と線維増生型(F型)の2病型に分類された.E型は非活動期が長く,F型は活動期が多く長く,再発傾向や症状も強かった.
    組織学的に見るとUCは,まずcrypt上皮のGCDを中心に展開される.GCDの進展と炎症性細胞浸潤の増加は明らかな相関を示した.とくにGCDを伴うcrypt上皮層内に好中球浸潤が認められ,GCDがcrypt上皮障害と密接に関わっていた.好酸球の高率な出現は浸出期に多く見られ,UCの発症と局所アレルギーとの関連性を示唆していた.全例粘膜の再生機転は盛んだがcryptに異型上皮の出現はなく,UCと癌化との関連は見い出し得なかった.
  • 本邦報告例と疾患感受性遺伝子との検討
    八木田 旭邦, 平原 哲也, 伊藤 久, 渡辺 寧, 北島 政樹, 立川 勲
    1986 年 39 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    一卵性双生児の大腸癌2症例を経験した.この2症例は,同時性(73歳)で,発癌部位の一致性が認められた,血液型物質による卵性診断で一卵性双生児の確証を得た.また大腸癌と密接な相関を示す2種類の疾患感受性遺伝子(HLAとGm)によるfamily studyを行った結果,両症例とも大腸癌と有意の相関が認められたHLA-CW3とGm-ab035stを所有するとともにGm遺伝子のg1遺伝子の欠損を認めた.本邦の消化器癌の一卵性双生児例は,自験例も含めて4家系あり,胃癌の2家系と盲腸癌の1家系がある.この全例に癌の家族集積性が認められ,発癌の部位ならびに同時性の傾向が認められた.この事実は発癌と遺伝的要因との密接な関連性を示唆するとともに,家族集積性が認められる発癌遺伝子保因者は,発癌部位と発癌年齢に関し宿命的であることを示唆している.
  • 伊籐 良, 千葉 満郎, 五十嵐 潔, 太田 弘昌, 長崎 明男, 荒川 弘道, 正宗 研, 吉田 司
    1986 年 39 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    注腸検査で,enema tube balloonの過伸展により直腸に生じたbarium granulomaを合併した潰瘍性大腸炎の1例を報告した,症例は60歳女性.約3年半前に発症した全大腸炎型潰瘍性大腸炎で,腹部単純X線写真で小骨盤腔内に3.5×2.5cmの陽性陰影があり,内視鏡検査では潰瘍性大腸炎の所見に加えて,肛門輪より4cm口側,4時方向に黄白色の斑状模様をみとめ,同部からの生検組織で淡黄緑色の結晶物質を貪食した多数のmacrophageがみられた.前医での注腸X線写真の検討から,enema tube balloonの過伸展が粘膜を損傷し発生した直腸barium granulomaと考えられた.わが国における直腸barium granulomaの報告は著者らが調べた限り8例と稀で,とくに潰瘍性大腸炎で起こった報告は本例のみである.なお,報告例8例のうち,診断確定のため,あるいはBorrmann IIまたはIII様の悪性像などと判定されたため4例に外科的処置が加えられている.
  • 栗原 陽一, 鈴木 秀, 和田 敏正, 猪狩 弘之, 小原 勝敏, 五十嵐 勤, 吉田 浩, 粕川 禮司, 土屋 敦雄, 渡辺 岩雄, 遠藤 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    発症後,約6カ月間に,狭窄が徐々に進行してイレウス様症状を呈したために手術になったS状結腸の狭窄型虚血性大腸炎の1症例を経験した.症例は52歳の男性で,1978年12月30日に大量の下血があり,ショック状態となり入院加療をうけた.一時小康状態にあったが,1979年6月頃からイレウス様症状が強くなり,同年7月初旬にS状結腸切除術が施行された.発症形式,X線所見,病理所見から,虚血性大腸炎の狭窄型と診断されたが,発症から189日目に手術したにもかかわらず,病変部の広範な潰瘍は瘢痕化されておらず活動性であった.
    虚血状態が持続的に進行したのか,あるいは間歇的に虚血発作が招来したのか,などの発症機序と経時的な腸管の形態学的変化の対応を検討すると興味ある症例と考えられた.
  • 安原 洋, 阿川 千一郎, 久保田 芳郎, 沢田 俊夫, 小西 文雄, 武藤 徹一郎, 森岡 恭彦
    1986 年 39 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    患者は42歳女性.13年前より潰瘍性大腸炎のため他院にて保存的治療を続けていた.2週間前より腹部膨満,嘔吐,腹痛などのイレウス症状と下痢が出現したため来院した.来院時の注腸造影ではS状結腸に高度の狭窄を認めたが,肛門側粘膜には隆起性病変は描出されなかった.内視鏡検査では狭窄部と内視鏡が通過せず,肛門側粘膜は平坦で隆起性病変,活動性炎症は認めなかった.生検で癌は認められず,検査所見よりS状結腸癌の存在を疑っていたところイレウス症状の増悪を認めたため手術を施行した.手術所見は大動脈周囲リンパ節に転移を伴う4型のS状結腸癌で,S状結腸切除術,リンパ節廓清を施行した.組織学的にはびまん性浸潤を示す印環細胞癌を主体とした腺癌で,周囲粘膜にdysplasiaを認めた.本邦における長期経過を有する潰瘍性大腸炎癌化報告例は欧米に比して未だ少ない.その点について若干の文献的考察を加え,報告した.
  • 渡辺 成, 薩摩林 恭子, 立川 勲, 山城 守也, 中山 夏太郎, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 高橋 忠雄, 日野 恭徳, 平島 得路, 森 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    われわれは造血器系悪性疾患に合併した大腸癌を4例経験した.このような疾患の組み合わせは現在では稀であるが,今後出現することが多くなると予想される.非上皮性の腫瘍と上皮性の腫瘍が,同時性にせよ異時性にせよ,同一個体に発生することは極めて興味深いことといえる.われわれは診療の面で実際に直面した二つの問題について考察を加えた.一つは手術適応の問題であり,造血器系悪性疾患が合併していても内科医と相談の上,積極的に切除を行うべきであると考えている.第2の問題は抗悪性腫瘍剤のもつ発癌性であり,とくにアルキル化剤の使用に際しては十分な監視が必要であることを強調したい.
  • 小平 正
    1986 年 39 巻 3 号 p. 287-288
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 白壁 彦夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 288-291
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 39 巻 3 号 p. 291-292
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 39 巻 3 号 p. 292-293
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 39 巻 3 号 p. 293-294
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 39 巻 3 号 p. 294-295
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 39 巻 3 号 p. 295-312
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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