1986 年 39 巻 3 号 p. 281-286
われわれは造血器系悪性疾患に合併した大腸癌を4例経験した.このような疾患の組み合わせは現在では稀であるが,今後出現することが多くなると予想される.非上皮性の腫瘍と上皮性の腫瘍が,同時性にせよ異時性にせよ,同一個体に発生することは極めて興味深いことといえる.われわれは診療の面で実際に直面した二つの問題について考察を加えた.一つは手術適応の問題であり,造血器系悪性疾患が合併していても内科医と相談の上,積極的に切除を行うべきであると考えている.第2の問題は抗悪性腫瘍剤のもつ発癌性であり,とくにアルキル化剤の使用に際しては十分な監視が必要であることを強調したい.