日本大腸肛門病学会雑誌
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病理組織を中心とした腺腫症の考え方
大腸腺腫症はAdenoma-carcinoma Sequenceの傍証となりうるか?
大倉 康男中村 恭一
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1987 年 40 巻 6 号 p. 699-707

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抄録

「大腸癌の大部分は腺腫から発生する」ことは広く知られた学説である.そして,数百から数千の腺腫を認める大腸腺腫症は癌発生が高いことから,adenoma-carcinomasequenceを裏付ける傍証の一つと考えられている。この傍証が確かなものなのかどうかを,腺腫および癌の組織像を検討すると共に,腺腫数からみた癌化率,腺腫面積の割合をもととして検討した.その結果,'腺腫症の腺腫の癌化率は一般のそれに比べて低い値を示し,腺腫面積も約30%とそれほど多いものではなかった.また組織学的検索では,腺腫症にも腺腫を経ないde novo癌の存在が多く認められた.これらから大腸腺腫症はadenoma-carcinoma sequenceを裏付ける傍証とはなり得ないと考えられた.本症に腺腫内癌が比較的多いのは,大腸粘膜全体に対する腺腫の割合が多いためである.大腸腺腫症は腫瘍の発生しやすい全身疾患であり,de novo癌,腺腫内癌が共に発生しやすいととらえるべきである.

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