1987 年 40 巻 7 号 p. 866-878
大腸癌のestrogenおよびprogesteroneのreceptor(ER,PgR)を検討するため,可能な限り同一の症例で,ERおよびPgRを生化学的定量法,螢光細胞化学的方法(螢光法)およびモノクローナル抗ER抗体を用いたER染色法により検索した.また内因性のestradio1(E2)およびprogesterone(PRG)の組織染色もABC法により施行した.陽性率は定量法では細胞質ER15.8%,核ER14.7%,細胞質PgR15.6%,核PgR21.4%であり,螢光法ではER16.3%,PgR18.6%であった.ER染色法では陽性例は得られなかった.ABC法ではE2(+)23.2%,PRG(+)19%であった.陽性例は3型や中分化型腺癌・n(+)・ly(+)・v(+)に多い傾向であり,深達度の深い進行癌に多かった.
大腸癌におけるER・PgRの検索には,螢光法が優れていると思われた.
大腸癌の中にER・PgRの存在する例が認められたことから,大腸癌に関してE2やPRGがなんらかの意義を有しているものと考えられ,そのため内分泌療法も治療効果をあげ得るのではないかと推測される.