日本大腸肛門病学会雑誌
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40 巻, 7 号
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  • 高橋 久, 竹島 真, 川口 新暉
    1987 年 40 巻 7 号 p. 807-812
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    56歳男性の本症を報告して,とくにその治療経過について詳しく解説した.本症の原因は不明であり,従来特に起炎菌と考えられるものの培養の報告は少なかったが,本症では悪臭が強くBacteroidesの関与が疑われたので,clindamycinの投与を行って成功した。しかし途中で菌が本剤に耐性を獲得して再燃を見たために,結局は膿瘍の切開を操返して創面の開放を行うと同時に,ポピオンヨード,過酸化水素水による洗滌によって最終的に治療に導いた。本症の原因は従来明らかでなかったが,嫌気性菌の開与が強く疑われることを強調し,同時に肛門周囲に生ずる稀有な疾患について,本症との鑑別診断を論じた。
  • とくに痔瘻との関連について
    岩垂 純一, 隅越 幸男, 小野 力三郎, 黄田 正徳, 宮脇 晴彦, 山本 清人, 有輪 六朗
    1987 年 40 巻 7 号 p. 813-821
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門周囲の膿皮症の手術症例25例を痔瘻との関係から,痔瘻を伴っていてなおかつ痔瘻と関係のある群と,ない群,そして痔腰を伴わない群の3群に分けて検討した.
    痔瘻を伴っていたものは25例中16例,64%で,うち11例,全体の44%に痔瘻と関係がみられた.今回検討を加えた全例が男性であり,年齢,病脳期間については,群別に差はなく,初発症状は痔瘻を伴っているものに排膿を訴えるものが多かった.
    合併していた痔瘻のタイプは,直腸肛門狭窄を伴うタイプが半数を占めていた.
    手術は全瘻管を切開開放し病変の及ぶ皮膚を切除する方法を行ったが,8例,32%が再発し,うち7例は痔瘻合併例であった.病理学的には,いずれの群も膿皮症の末期像を呈し,特に差はみられなかった.
    索引用語:肛門周囲の膿皮症,痔瘻と膿皮症,膿皮症の手術
  • 高野 正博, 藤好 建史, 高木 幸一, 石見 賀正, 平井 一郎, 木下 良順, 河野 通孝, 小倉 克徳
    1987 年 40 巻 7 号 p. 822-833
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門周囲の化膿性疾患としてはポピュラーである肛囲膿瘍,痔瘻以外に,毛巣瘻・膿皮症・蜂窩織炎の3疾患があり,過去5年間に,それぞれ33例,6例,5例を経験した.
    毛巣瘻は仙尾骨部の正中付近に存在し,その病因,慢性経過,毛髪を蔵している点に特徴がある.病因には毛髪の由来の点で,内因説と外因説とがある.瘻管すべてを切除することがその根治につながる.膿皮症は,会陰から臀部に発生し,多くの場合両側性で,広範にわたる皮下組織の慢性化膿性疾患であり,アポクリン腺感染に由来するとされている.この手術も瘻管の全開放を必要とする.この二疾患では切除範囲を小さくして一次的に閉鎖することが望ましい.蜂窩織炎は多くが肛囲膿瘍から進展し,嫌気性菌を含む混合感染のことが多く毒性がきわめて強い,その進行は速やかで,数日にして会陰・陰嚢・鼠径・腹壁へと及ぶ.この疾患の治療は,速やかな病変の開放と,抗生物質・輸液・輸血・ショックに対する防止などの適切な全身管理が必要となる.
  • 衣笠 昭
    1987 年 40 巻 7 号 p. 834-838
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    殿部,肛囲部に発生する慢性化膿性瘻孔を形成する皮膚疾患の中,比較的多く見られるようになった慢性化膿性汗腺炎について症例を提示し,また現在までに経験した症例の症状,生活歴より発生原因を推察し,併せて症状,治療の概略を述べた.本疾患は,病理組織学的に判断してアポクリン腺のみの感染により生ずるものではなく,殿部,肛囲部皮膚およびその付属器,良性腫瘍の感染に持続的な圧迫が加わり進展するものと考えられる.症状は急性,慢性の像が混在し,侵された皮膚は肥厚して色素沈着を認め,多数の瘻孔を形成する.治療としては外科的に病変部を切除し,開放創とすることが必要である.
  • とくにCrohn病の潰瘍形成機序に関連して
    舟山 裕士, 佐々木 巖, 内藤 広郎, 神山 泰彦, 福島 浩平
    1987 年 40 巻 7 号 p. 839-844
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    正常腸管の血管構築を明らかにすることにより腸管壁における血流障害の部位別特徴について検討し,Crohn病(CD)の潰瘍形成機序について腸管血流の観点から考察を行った.
    正常腸管の血管構築の検討は14例の剖検例の微細血管造影により行った.その結果,小腸においては腸間膜付着部対側では粘膜下層の隣合う血管からの吻合枝は比較的太く密であるため相補的な血行動態を示すのに対し,付着側では吻合枝は細く隣合う血管との連絡は粗であった.一方,結腸での腸間膜付着側は腸間膜紐を中心とする3本の結腸紐にまたがり,vasa rectiはこの範囲で不規則に腸壁を貫いていた.粘膜下層における血管の分布は小腸ほど規則的ではなく,太い枝が対側へむかう傾向はあるものの,細い分枝は放射状で不規則な序列のない吻合を繰り返していた.
    したがって小腸および結腸での血管構築は部位により特徴ある分布を示し,CDの潰瘍形態に影響を与えていると考えられた.
  • precancerousかparacancerousか?
    武藤 徹一郎, 大矢 正俊, 杉原 健一, 阿川 千一郎, 洲之内 広紀, 森岡 恭彦
    1987 年 40 巻 7 号 p. 845-849
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    化生性ポリープ16症例22病変,腺腫と化生性ポリープの鑑別が困難な1cm前後の大きな分類不能ポリープ4病変を対照に,CullingらのPeriodic Acid-Thionin Schiff/Potassium Hydroxide/Periodic Acid-Schiff(PAT/KOH/PAS)染色を用いて粘液組成の変化を検討した,
    化生性ポリープのうち20病変(91%)はO-acylated sialomucinの減少を示す紫~青に染まった.この粘液染色性は癌における粘液染色性に類似しているが,precancerousな変化というより,paracancerousな変化と考えられた.分類不能なポリープ4個中3個は赤く染まりO-acylated sialomucinの減少がみられなかった.粘液組成の性状からは,これら3個のポリープは腺腫の範疇に含まれると考えられた。分類不能のポリープと化生性ポリープとの鑑別にPAT/KOH/PAS染色は有用であった.
  • 高橋 利通, 大木 繁男, 大見 良裕, 飯田 明, 古嶋 薫, 池 秀之, 大出 直弘, 林 嘉繁, 土屋 周二
    1987 年 40 巻 7 号 p. 850-854
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    圧挫式無縫合吻合器(AKA-2)を用いて直腸癌50例,S状結腸癌8例に対し直腸結腸端々吻合による前方切除術を行った。吻合部の口径は大きく,治癒も良好であった。合併症は比較的少なく,縫合不全6例,狭窄4例で,これらのうち,手術を必要としたものは縫合不全の1例のみであった。
  • 内視鏡・生検による効果判定
    更科 広実, 轟 健, 岩崎 洋治, 大津 裕司
    1987 年 40 巻 7 号 p. 855-861
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    進行直腸癌に対する術前照射療法の効果を高めるため,抗癌剤の腫瘍内局注併用療法を施行した。これらの治療前後に内視鏡検査と生検を施行し,照射単独例や切除標本病理所見と比較検討した。
    局注併用例は狭窄の改善,腫瘍辺縁隆起の平坦化など内視鏡的に著しい改善例が多くみられた.また切除標本肉眼所見との比較では,局注併用例に瘢痕収縮傾向が少く,このような差が内視鏡的改善程度に影響しているものと考えられた.
    照射後の生検結果は照射単独例全例が陰性で,局注併用例では55.6%が陽性であった.これらの生検結果や生検で得られた病巣の組織学的変化と,切除標本の照射効果との問には明らかな相関を認めなかった.このような結果から42.6Gy照射後の生検によりその治療効果を予測することは極めて難しいことが示唆された.
  • 黒須 康彦, 中西 浩, 森田 建
    1987 年 40 巻 7 号 p. 862-865
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去15年間に経験した大腸pm癌22例を臨床病理学的に検討した.
    男性11例,女性11例であり,平均年齢は57.3歳であった.直腸に多く肉眼形態では2型,環周度では1/4周,腫瘍最大径では2~4cmのものが最多を占めた.肝転移例,腹膜播種性転移例はなく,リンパ節転移陽性率は15.0%であった.結腸癌,直腸癌別のリンパ節転移程度は,前者では第1群リンパ節まで,後者では第2群リンパ節まで転移を認めた.リンパ管侵襲は結腸癌71.4%,直腸癌33.3%,静脈侵襲は結腸癌42.8%,直腸癌13.3%に認めた.組織型では高分化腺癌が最多を占めた.行われた術式は,結腸癌では結腸半切除術6例,S状結腸切除術1例,直腸癌では直腸切断術6例,低位前方切除術7例,局所切除術2例であった.局所切除例2例を除く検討では,全例に治癒切除術が行われており,局所切除例の1例が局所再発をきたし,5年生存率は91.6%であった.
  • 高 相進
    1987 年 40 巻 7 号 p. 866-878
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌のestrogenおよびprogesteroneのreceptor(ER,PgR)を検討するため,可能な限り同一の症例で,ERおよびPgRを生化学的定量法,螢光細胞化学的方法(螢光法)およびモノクローナル抗ER抗体を用いたER染色法により検索した.また内因性のestradio1(E2)およびprogesterone(PRG)の組織染色もABC法により施行した.陽性率は定量法では細胞質ER15.8%,核ER14.7%,細胞質PgR15.6%,核PgR21.4%であり,螢光法ではER16.3%,PgR18.6%であった.ER染色法では陽性例は得られなかった.ABC法ではE2(+)23.2%,PRG(+)19%であった.陽性例は3型や中分化型腺癌・n(+)・ly(+)・v(+)に多い傾向であり,深達度の深い進行癌に多かった.
    大腸癌におけるER・PgRの検索には,螢光法が優れていると思われた.
    大腸癌の中にER・PgRの存在する例が認められたことから,大腸癌に関してE2やPRGがなんらかの意義を有しているものと考えられ,そのため内分泌療法も治療効果をあげ得るのではないかと推測される.
  • 大東 誠司, 松本 紀夫, 梅田 浩, 森 正樹, 成高 義彦, 矢川 裕一, 菊池 友允, 小川 健治, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎, 川田 ...
    1987 年 40 巻 7 号 p. 879-883
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併した多発性直腸癌を経験した,症例は29歳女性.17歳の頃より全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断され,内科的治療を受けていたが緩解と再燃を繰り返していた.血便とテネスムス症状炉増悪し直腸指診,内視鏡生検で癌の診断を受けた.腹会陰式にて全結腸,直腸切断を行い回腸瘻造設術を施行した.切除標本では全大腸の粘膜は荒廃萎縮しており,下部直腸,肛門管部に潰瘍浸潤型の中分化腺癌を,直腸S状部にカリフラワー様の高分化腺癌が存在した.癌の口側と脾彎曲部に腺腫様変化を示す小隆起性病変が散在していた.潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌は目本ではいまだ少ないが,潰瘍性大腸炎の長期観察例が多くなるに従い癌合併例は増加すると予測される.癌合併例の早期発見には定期的な検査,とくに内視鏡による異型上皮の観察が重要である.
  • 遠藤 克博, 渡辺 晃, 鶴井 顕, 佐藤 恒明, 鵜浦 章
    1987 年 40 巻 7 号 p. 884-888
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    今日,クローン病の治療において,栄養療法は重要な位置を占めている。今回,われわれは16例の活動期のクローン病に対しED2400kcal/日を経管的に投与し,その結果を検討した。その結果,1)ED単独投与例全例で,臨床的にも,内視鏡的にも緩解が得られた。2)ED投与前,サラゾピリンや他の薬剤を投与し,臨床的または内視鏡的に緩解に至らなかった12例に対しこれらの薬剤と併用してEDを投与したところ全例で臨床的にも内視鏡的にも緩解が得られた。したがって,EDは活動期クローン病の治療に有効と考えられた。
  • 樋渡 信夫, 中嶋 和幸, 山崎 日出雄, 熊谷 裕司, 山下 和良, 森元 富造
    1987 年 40 巻 7 号 p. 889-893
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患の家族内発生の頻度と臨床像を明らかにする目的で,自験例について検討した.潰瘍性大腸炎296家系(1954年~87.6)のうち,潰瘍性大腸炎の多発は8家系(2.7%)に認めた.このうち6家系は兄弟例,2家系は母子例であった.発症年齢の近似は2家系,発症時期の近似は3家系,病型の類似は3家系に認められた。家族内発症例と"非家族例"との比較では臨床像に差はなかった.クローン病に関しては,85家系中3家系(3.5%)に家族内発生を認めた.1家系は母子例,2家系は兄弟例であり,3家系ともそれぞれ罹患範囲が同じであった.同一家系に3例以上の発症や,クローン病と潰瘍性大腸炎の混在を認めた家系はなかった.
    炎症性腸疾患の家族内発生が高頻度にみられたことは,偶然によるものではなく,遺伝的要因と環境要因が病因に強く関与していることが示唆された.
  • 熊谷 裕司, 樋渡 信夫, 中嶋 和幸, 山崎 日出雄, 山下 和良, 佐藤 弘房
    1987 年 40 巻 7 号 p. 894-899
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    当科を受診した22家系31症例について,1)残存直腸のfollow-up 2)他臓器腫瘍の合併 3)罹患家系員調査の現状について検討した.
    1) 直腸温存術を施行した12例のうち当科でfollow-upしえた9例については,術後2~12年(平均4.6年)間に平均して9カ月に1度の頻度で検査を受けていたが,残存直腸の癌化や明らかなポリープの増加は認めなかった.
    2) 胃ポリープは43%に,十二指腸ポリープは71%に認めた.顎骨パノラマ撮影では28例中26例に内骨腫を認めこのうち25例は多発していた.また19歳以上の5例では3~12年経過後も数・大きさともに不変で,この病変が青年期以前に完成し特異性も高いことより,FPCの早期診断に有用と考えられた.
    3) 発端者の同胞52名のうち未検査者は34名いたが,このうち11名(32%)が検査を受け,5名がFPCと診断された.12歳以上の発端者の子供は33名いたが,このうち18名(55%)が検査を受け,6名がFPCと診断された.
  • 健常人皮膚における検討
    高屋 通子
    1987 年 40 巻 7 号 p. 900-906
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    人工肛門,人工膀胱用装具に用いられる粘着剤の皮膚生理機能に及ぼす影響について検討した.健常人20~60歳の男女19人を無作為にえらび,カラヤ(A),CMC系(B),カラヤとCMC系の混合剤(C),アクリル系(D)を腹部に貼布し,1週,1,月,3カ月後に,角質層の水分量および皮表脂質を測定した.また,皮表の構築について,レプリカを作製し,実体顕徴鏡にて検討した.
    結果は,(1)角質:水分量(単位Relative Conductivity):1週後A40.6,B18.4,C22,6,D14.6,1月後A47.3,B27.1,C22.3,D13.2,3カ月後A51.0,B14.8,C28.3,D6.8,(2)皮表脂質(単位μg/cm2):1週後A2.8,B4.2,C2.8,DO,3カ月後A2.4,B3.8,C,Dは0であった.
    皮表構築:1週後:Aは健常部と大差ない裂B,Cは一方向に皮溝が深まる傾向,Dでは小区の乱れが著明であった.3カ月後,A,B,C,Dの種類に関係なく,一方向に皮溝の流れと深まりがみられた.
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