1988 年 41 巻 1 号 p. 34-38
盲腸軸捻転症の1例を経験したので報告し,自験例を含め検索し得た本邦例46例の検討を行った.症例は61歳男性,嘔気,腹痛で発症,腹部単純X-Pで左上腹部に著明に拡張した大腸ガス像を認め,注腸では横行結腸途中でバリウムが停止した.横行結腸癌,あるいは横行結腸軸捻転症の術前診断で緊急手術を行った.開腹所見は,盲腸が時計回転に540度軸捻転しており,総腸間膜症はなく,移動性盲腸のみであった.腸管壊死はなく整復,減圧,固定術で手術を終了,術後経過は良好であり,現在まで再発もない.本症は特徴ある疾患でありながら術前診断は難しい事が多く,本邦例でも正診率は20%であった.治療については,腸管非壊死例では整復,固定術で十分に満足な結果が得られると考えてよいが,壊死例では,とくに高齢者,合併症を有する症例で死亡率が今なお高く,正しい早期の診断,治療が重要である.