日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸早期癌のX線診断
丸山 雅一
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1988 年 41 巻 7 号 p. 873-883

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抄録

近年,本邦における大腸癌は漸増傾向にあり,西暦2000年には,全癌のトップの座を占めるであろうとの予測がなされている.大腸癌,とくに早期癌の診断に関する研究は,早期胃癌の診断が軌道に乗り始めた頃に開始された1),言い方を変えると,早期大腸癌の診断は早期胃癌の診断のアナロジーとしての可能性を追求するところから始まった.事実,早期大腸癌の大部分は隆起性病変であり,これを早期胃癌の隆起型分類で整理することが可能であった.
そして,方法論的には,すでに10年前には,早期大腸癌の診断は確立されたはずであった.ところが,われわれの施設で内視鏡的ポリペクトミーを開始した1973年より1987年に至る15年間の早期大腸癌の発見頻度には大差がない(後述).一方,進行癌の発見数は15年間に倍増している.この事実を,純粋に診断学の立場からながめると,早期大腸癌の診断学は,10年前に期待したほどには進歩していないと考えるべきであろう.トータルコロノスコーピーが隆盛をきわめている昨今においてもである.
つぎに,不遜なことながら見方を変えて,早期大腸癌の発見数が増加しない事実を,粘膜内癌の病理組織学的診断基準との関連において捉えることも必要であろう.X線・内視鏡診断の存在意義は,組織学的所見の違いは肉眼所見の差として認識可能であるという一点にある.病理組織学的診断の進歩が混乱をも包含している3)状況を否定できないとすれば,逆に,臨床診断の側から病理組織学的診断にその整合性を求める試みがあって当然である.
本論文で笹者が意図したのは,以上述べたことがらを踏まえて,早期大腸癌の存在診断と質的診断(診断理論)の現状を再評価するとともに,それぞれがかかえている問題点を明らかにすることである.

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