1988 年 41 巻 7 号 p. 939-944
進行直腸癌に対する術前照射療法の効果を高めるため,放射線増感剤(PepleomycinとBUdR)の腫瘍内局注併用療法を施行した.その治療効果を比較するため,照射単独群15例と局注併用群19例の切除標本を用い検討した.対象とした癌巣はすべて固有筋層外に遺残するもので,連続切片にみられる個々の病巣を大星・下里分類に従い組織学的に判定した.このようにして得られた照射効果の程度(Grade)の分布状況に従い,それぞれ5段階(E1~E5)に分類し両群の治療効果を比較した.その結果,すべての切片でGrade IIb以上の効果が認められ有効と判定された症例(E4,E5)は,照射単独群26.7%,局注併用群57.9%であった.両群間に統計的有意差(P<0.05)が認められ,局注併用療法の有効性が示唆された.