1988 年 41 巻 7 号 p. 976-981
malignant lymphomaに伴う消化管病変の報告は多いが,今回われわれは,興味ある大腸X線所見を呈した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する. 症例は60歳の男性で,多量の下血と全身倦怠感にて搬入され,全身リンパ節腫大と肝脾腫,さらに注腸二重造影法で大小多数の小隆起を認め,同隆起からの生検によりmalignant lymphomaと診断された.このようなリンパ系疾患に伴う消化管の広範囲な隆起性病変を,最初に報告したのはBriquet(1835年)であり,その後1961年にCornesらは,28例をまとめmultiple lymphomatous polyposis of gastrointestinal tract (MLP) の名称を提唱している.今回のわれわれの症例も同疾患と思われるが,すでに全身リンパ節腫大と肝脾腫を呈しており,成井らのいう病期IIIに相当すると思われる.