1988 年 41 巻 7 号 p. 971-975
症例は37歳の男性である.18歳時に全大腸炎型潰瘍性大腸炎の診断のもと,当科にて全結腸切除兼回腸直腸吻合術を施行された.術後18年目に残存直腸より発生したと思われる進行直腸癌を認め,放射線療法などを施行したが昭和61年9月死亡した.近年潰瘍性大腸炎の癌化が注目されているが,本疾患に対する全結腸切除兼回腸直腸吻合術後の残存直腸を母地として癌が発生したという報告は,本邦では見当たらない.潰瘍性大腸炎に対する術式の中で,大腸粘膜が残存する場合には,術後の適切なフォローアップがとくに重要であると思われた.