1989 年 42 巻 1 号 p. 23-30
大腸癌肝転移に対して行った肝切除後に残肝再発を69.4%に認められたことは, 肝切除術の適応を含め大きな問題を示している.そこで, 自験の肝切除術施行, 36例について, 残肝再発の有無 (有り : 25例, 無し : 11例) およびそれに関係すると思われる諸因子を検討した.検討項目と結果は次のとおりであった. (1) 原発大腸癌の脈管侵襲の有無は, 残肝再発と関係がなかった. (2) 同時性切除と異時性切除とでは, 異時性切除の方が残肝再発が少ない傾向であった. (3) H因子では, H1が有意に残肝再発の発現が少なかった. (4) 主転移巣の大きさでは, 5.0cm以上のものは, 残肝再発をきたす頻度が高かった. (5) 転移数では, 1個のものに, 残肝再発が少ない傾向を示した. (6) 手術術式では, 比較的小範囲切除ですんだ例に残肝再発が少ない傾向を認めた. (7) 肝切離面の癌浸潤の有無は, 残肝再発の有無と関連のあることが示唆された.