1989 年 42 巻 1 号 p. 59-63
大腸癌の肝転移例のうち肝切除を施行した55例について検討を加えた.原発巣は結腸癌22例, 直腸癌33例である.同時性肝転移に対する一期肝合併切除は41例, 異時性肝転移が14例である.肝転移の程度は単発29例, 多発26例であり, h1 40例 (うち右葉のみ22例, 左葉のみ18例), h2 15例である.肝切除の範囲は右葉切除11例, 左葉切除4例, 区域切除25例, 楔状切除15例であった.胆汁性腹膜炎の1例以外は重篤な合併症を認めなかった。3年生存率34.6%, 5年生存率17.4%であった.生存曲線からみるとh1はh2に比べ有意に良好であったが, 単発と多発および同時と異時では有意の差を認めなかった.再発を確認した27例のうち残肝における再発が22例もあり, 残肝に対する強力な補助化学療法の必要性が示唆された.