1989 年 42 巻 1 号 p. 76-86
大腸癌の発育過程を知る目的で, 手術摘出標本にmicroangiographyを行い, 大腸ポリープと癌の血管構築像を形態別に分類して検討した.大腸ポリープの血管構築は基本的に樹枝状, 扇状, 柵状, 混合型に分類され, 腫瘍の異型性に準じた改築がみられた.有茎性ポリープは樹枝状, 扇状を呈し, 柵状型はIIa, IIa+IIc, 混合型はIIa集籏型であった.癌化率は対全病変20%で, 腫瘍径に比例して高くなる傾向がみられた.腫瘤型pm癌はポリープの樹枝状, 扇状型に類似し, stalk invasionの像がみられた. ss (a1) 以深では血管系の改築に伴う微小循環樟害性病変がみられ, 潰瘍型の頻度が高い.潰瘍型進行癌は柵状型からの水平方向進展と樹枝状, 扇状型からの垂直方向進展が推察され, 後者は約65%にみられた.大腸ポリープの血管構築の特性とその改築様式は腫瘍の増殖に対応して大腸癌の発育, 進展に大きく関与することを強調した.