日本大腸肛門病学会雑誌
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成分栄養法による大腸手術前処置に伴う腸内細菌叢の変動についての実験的, 臨床的検討
-とくに抗菌剤併用の有効性について-
炭山 嘉伸長尾 二郎中村 集
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1989 年 42 巻 1 号 p. 99-104

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抄録

大腸癌手術症例の術後合併症としての創部感染や縫合不全の発生の因子として, 腸内容の存在があげられる.これに対する術前の処置 (colon preparation) の重要性について, 実験的臨床的検討を行った.実験的検討については, Wistar系ラットを用い, 成分栄養法 (ED) を行ったのち抗菌剤としてKanamycin (KM), Metronidezole (MTN), KM+MTNをそれぞれ4日間経口投与し, 腸内容についての好気性菌, 嫌気性菌の変動をED単独群と比較検討した.さらにラットの横行結腸に狭窄を作成し, 同様の検討を行った.臨床的検討では, 狭窄のあまり強度ではない, すなわち十分な機械的preparationの期待できる大腸癌症例を対象に, ED単独群, ED+KM群, ED+MTN群, ED+KM+MTN群について, 術中腸内容を採取し, 細菌学的検討を行った.
結果 : (1) 腸内細菌叢の変動からみて, ED単独使用による細菌学的効果は狭窄 (一) 群においては若干認められたが, 狭窄 (+) 群では無効であり, EDによる機械的preparationに加え抗菌剤の投与が必要と思われた. (2) 好気性菌, 嫌気性菌両方に対する抗菌作用から, antibacterial preparationとしてはKanamycinとMetronidazoleの併用が有効であることが実験的a臨床的検討から確認された.以上から, 宿便傾向にある, 大腸癌手術症例に対しては, EDによるmechanical preparationに加え, KM+MTNによるantibacterial preparationが術前処置として重要であると思われた.

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