1989 年 42 巻 6 号 p. 1025-1030
慢性の排便障害を訴える患者に対しdefecography (排便造影) を行い, 診断および治療法の選択に有効な知見を得たので報告する. 外来において排便困難あるいは排便時の不定愁訴のある患者51例にたいし defecographyを施行した. 結果はrectocele (直腸腟壁弛緩症) 23例, 直腸粘膜脱11例, 恥骨直腸筋症候群4例, 会陰下垂症候群1例などの結果を得た. それぞれの症例に対して静止時と息んだ時のanorectal angle (ARA) およびperineal descent (D) を測定した. 正常群, rectocele群, その他の群に分けると, rectocele群は他の群に比較してARAは明らかに減少しており, またDは正常群に比べて増加していた. さらに, 同時にVTRに記録することによって排便状態をダイナミックに捕らえることができ, 直腸粘膜の一部が逸脱していく状態が観察され, 直腸粘膜脱の診断に有効であった. 排便障害の診断にdefecographyは簡便で有効な検査法と考えられる.