日本大腸肛門病学会雑誌
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Lamininの免疫組織化学による癌の静脈侵襲に関する研究
大腸癌について
久保 隆一松田 泰次肥田 仁一赤埴 吉高足立 俊之進藤 勝久安富 正幸
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1990 年 43 巻 2 号 p. 172-177

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抄録

大腸癌の静脈侵襲判定に基底膜の構成成分であるlamininを用いた免疫組織学的染色を行なったところ良好な結果を得た.静脈侵襲陽性率は77.9%と高率になった.laminin染色では癌組織内の血管や毛細血管も明瞭に染色され, 従来の弾性繊維染色では観察が不可能であったこれらの微小血管にも高率に静脈侵襲が認められた.そこでこのような微小血管の静脈侵襲が肝転移とどのような関係があるか検討した.侵襲部位では癌辺縁が肝転移に重要であった.侵襲静脈の個数は肝転移率と相関しなかった.侵襲静脈の大きさと肝転移率を検討すると, 200μm以上の血管とともに50μm以下の静脈に侵襲が認められる症例の肝転移率が高く, 細静脈や毛細血管も肝転移と関係が深いと考えられた.以上よりlaminin染色は癌の静脈侵襲判定をするうえで有用であると考えられた.

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