日本大腸肛門病学会雑誌
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女性の前方痔瘻
高野 正博藤好 建史高木 幸一河野 通孝野村 真一橋本 正也辻 順行桂 禎紀濱田 映
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1990 年 43 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

われわれは過去6年3カ月間に経験した女性の前方痔瘻46例について分析した (ただしクローン病に伴うものを除く).その特徴を述べると, 年齢的には一般の痔瘻と同じく30歳代にピークがある.痔瘻の型は単純で浅いIILsが圧倒的に多い.ただし, IIH, IIHIILs, IIIUs, IVも各1例がある.しかし複雑なもの (c) や腟に穿孔するものはない.病悩期間は短期のものからごく長期のものまで広く分布している.治療は浅いものでは開放術式を24%に, 括約筋をやや深めに貫くものにはくりぬきを主とした括約筋温存術式を76%に行っている.ただしわれわれのくりぬき術式はParks術式と異なり, 内括約筋をsegmentalに切除せず, 内方はprimaryに閉鎖する方法である.術後管理に特別のものはない.術後合併症には疼痛・出血・スキンタグ等があるがいずれも大したことはない.入院期間は大部分が25日以内で, 治癒日数はほとんどが40日以内である.再発は6例でいずれも括約筋温存術式に起っており, 再手術を行い, その経過は1例を除き良好である.この痔瘻に特徴的なものとして, 歯状線と肛門縁との中間, すなわち肛門上皮の中間部分に原発口が開口する症例が12例 (26%) にみられ, 非常に特異的な形態であるのでその病理学的特徴を加えて報告する.

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