1990 年 43 巻 3 号 p. 419-426
イヌに N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (ENNG) 坐剤を経肛門的に連続投与し実験的に隆起型直腸癌を作成して, 組織発生および進展様式について検討した.実験開始より定期的に内視鏡検査, 生検を施行し経時的観察を行った.その結果肉眼的には, 発赤にはじまり, ついで無茎性小隆起が出現, 経過とともに隆起は増大し隆起型癌に発育進展していく過程が観察された.組織学的検索では, はじめ小隆起は腺管腺腫であったが, これが cancer in adenoma の像を経て高分化型腺癌に発育していく像が確認された.以上より, 実験面からは, 隆起型癌は腺管腺腫にはじまり癌へと進展していく, いわゆる adenoma carcinoma Sequence説を証明しえた.そして, その進展は非常に緩慢であった.また他の1頭では, その経過観察中に隆起が消失し, 再び隆起が出現する経過も観察することができた.