日本大腸肛門病学会雑誌
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炎症性腸疾患における胆石合併の臨床的研究
増澤 成幸
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1990 年 43 巻 6 号 p. 1154-1161

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抄録

炎症性腸疾患に合併する胆石症の成因の一端を解明する目的で, 炎症性腸疾患自験例 (潰瘍性大腸炎42例, Crohn病27例) の胆汁中脂質分析およびコレステロール結晶析出時間の測定を行い, 総胆汁酸濃度は, 潰瘍性大腸炎保存治療例31例・手術例10例ともに有意に低下しCrohn病では回盲部病変を有する保存治療例6例と回盲部切除例11例のみ有意に低下していた.胆汁中コレステロールの組成比は各症例とも変化がなかった.胆汁のlithogenic index 1.0以上の症例は各対象のうち半数近くに認められたが, 胆石生成との関係は明らかに出来なかった.コレステロール結晶析出時間は潰瘍性大腸炎保存治療例を除くと短縮し, こうした症例では胆石を合併しやすいと思われた.析出時間の短縮は, 炎症性腸疾患による機能欠落が主な要因と考えられたが, 析出時間の促進および抑制因子であるアポ蛋白, ムチン, カルシウムイオン等についてさらに検討が必要と思われた.

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