腫瘤摘出術9年後に死亡した直腸平滑筋肉腫の1例を報告する.患者は52歳女性,肛門部腫瘤を主訴に来院した,肛門縁より6cmの直腸に鶏卵大の腫瘤を認め,摘出術を施行した.組織所見では細胞密度は高いが細胞異型は軽度で核分裂像もごく少数であり良悪性の診断は困難であったが,平滑筋肉腫と診断した.4年後に局所再発がみられ,腹会陰式直腸切断術を施行した.肝右葉に径2cmと1.5cm,左葉に1.5cmの転移を認め,Adriacin総量180mg,Picibanil総量40KEを全身投与し,6年後Adriacin総量120mgの肝動注を施行したが,著効はみられず摘出術9年後に死亡した.平滑筋腫瘍の良悪性の鑑別は時に困難で,そのような症例には積極的な手術適応と長期に渡る厳重な経過観察が必要と思われた.