日本大腸肛門病学会雑誌
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III-2 難治性痔瘻
松田 直樹
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1991 年 44 巻 8 号 p. 1150-1154

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抄録

普通の痔瘻は原則通り感染巣の切除を十分に行えば治癒するが,なかには同様の手術を行っても経過が悪く治癒が遷延するものや,一度の手術では治癒し難い,いわゆる難治性痔瘻と呼ばれるものがある.それらは一般に全痔瘻症例の約10%を占めるという.当院の過去2年間の痔瘻症例でも512例中,難治性のものが56例(10%)にみられた.また痔瘻の急性期症状の一つともいわれる肛門周囲膿瘍の症例148例中にも難治性のものが48例(32.4%)にみられた.これらの症例をしらべ難治性痔瘻の特徴を分析した.それによると難治性痔瘻の平均発症年齢は41.1歳,平均病悩日数は2年10カ月,高位痔瘻の占める割合は隅越分類のIIH型は24%,III型は40%で,平均治癒日数は54日,手術既往のある者の占める割合は76%であった.これらの数値は普通の痔瘻のものに比較して,全体に高めの値を示すことがわかった.従って,これらのことを念頭に入れ診察に臨めば普通の痔瘻と難治性痔瘻との判別や術式選択の目安になるものと思われる.

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