1991 年 44 巻 8 号 p. 1214-1219
正常細胞中には,癌細胞のもつ種々の形質を抑制する遺伝情報が存在する,このことが細胞雑種法を用いた実験により示されたのが,癌抑制遺伝子研究の発端であった.近年,単一染色体移入法により,正常細胞由来の1本の染色体を癌細胞に導入することが可能となり,この手法を用いて癌抑制遺伝子についての染色体レベルでの研究が進められている.これまでに大腸癌を含む種々の癌由来の細胞株を用いて得られた結果は,機能的に異なった数多くの癌抑制遺伝子が存在することを示し,細胞雑種法やRFLP解析による知見を裏付けた.