1992 年 45 巻 1 号 p. 41-47
痔瘻の根治術に際して,最近は括約筋温存術式が我が国でも重要視されている.しかしこの括約筋温存術式の欠点として,瘻管のすべてが確認あるいは切除されていないということに加え,正常組織とりわけ括約筋との関連性が十分把握されないことがある.したがって機能温存という点では優れているとしても,痔瘻の根治という点では従来の瘻管開放あるいは切除術式に比していささか後退した感がある,この両者を完全に満足させるために,私は痔瘻の全長にわたって周囲組織とりわけ括約筋との関係をすべて確認し,正常組織を傷つけることなく瘻管をすべて切除し,総修復するやり方を行い,これを「解剖学的痔瘻根治術」と称している,現在までかなりの症例に行っているが,その成績は従来の術式に比して非常に優れており,さらには以上に述べた長所に加えて教育学的意義,痔瘻の発生の解明と治療の向上といった研究面でも大いに寄与するところがあると考える.