1992 年 45 巻 3 号 p. 297-303
本邦におけるCrohn病の家族内発生は極めて稀であるが,われわれは兄弟発生例を経験したので報告する.症例1:15歳男(弟),昭和51年3月,回盲部痛あり近医にて虫垂切除を受けたが,虫垂は正常で,回盲部に腫瘤を認められ本院へ紹介入院した.小腸造影にて回腸末端の狭窄と瘻孔形成を認めCrohn、病と診断,回盲部切除を施行,回腸に縦走潰瘍と腸間膜に瘻孔を認めた.術後15年再発もなく健在である.症例2:29歳男(兄),22歳時,虫垂切除を受けたが,その後も時に腹痛があった.6年後の昭和63年3月腹痛にて来院,小腸造影にて回腸末端の狭窄と瘻孔形成およびS状結腸の狭窄が認められ開腹,回腸約150cmとS状結腸を切除した.回腸には縦走潰瘍とskip lesionを認めた.術後3年再発の兆候はない.また,HLA抗原の検索では,症例2(兄)にお移て,BW61を認めたにすぎなかった.