1992 年 45 巻 7 号 p. 1033-1038
痔瘻の診断は,従来,指診が唯一の診断手段であったが,近年,経肛門機器を応用することによって痔瘻を診断することも可能となった.今回は痔瘻の症例200例を選び,指診と経肛門的超音波検査の術前診断を手術中の所見と比較し,その的中率を調べた.その結果,指診では正診率63.5%,正診・一部誤診率17.5%,正診と一部誤診率を合わせると81.0%,誤診率が19.0%であった,一方,経肛門的超音波検査による正診率は58.5%,正診・一部誤診率が31.0%,その両者を合わせると89.5%で,誤診率は10.5%であった.この両者に差があることの理由としては,指診においては括約筋内を貫く病変部の触知が困難であるのに加え,病変を一箇所見出すと安心してしまい,また浅く診断するより深く診断しておいた方が無難であるという心理から生じる場合も少なくない.一方,経肛門的超音波検査においては,ない痔瘻をありと読んだ例が多く,括約筋との関係における的確な痔瘻の存在診断が未だ不十分であることからきていると思われる,