1992 年 45 巻 7 号 p. 999-1003
AFPが著明な高値を示した直腸癌症例を経験したので,AFP1000ng/ml以上を示した本邦報告例8例をもとに若干の考察を加え報告した.症例は58例の男性,主訴は下血であった.諸検査にて直腸癌の肝転移と診断したが,AFPが200万以上と高値を示した.人工肛門を造設し抗癌剤による治療を行ったが約3カ月後に肝不全にて死亡した.直腸の腫瘍部と転移巣である肝腫瘍部,ともに酵素抗体法によるAFP染色にて陽性所見を示し,ともにAFPを産生していることがあきらかとなった.