1992 年 45 巻 8 号 p. 1152-1158
東大第1外科において13例のm癌,18例のsm癌,4例のpm癌,1例のa1癌(合計36例)に対して局所切除術が施行された('67-'91).局所切除術のほとんどがRb癌に対して施行され(83.3%),より肛門管に近いものに経仙骨的切除や経肛門的切除が選択されていた.有茎性の病変は4例と少なく,無茎(Is),平坦陥凹型(IIa+IIc)病変がそれぞれ9例と多くかった(50%).絨毛腫瘍や結節集簇様病変には経仙骨的切除術が行われていた(6例中4例).経肛門的切除は2cm以下に,経仙骨的・括約筋的切除は4cm以上の病変に行われていた.その結果,縫合不全は2例であり(5.6%),sm癌の癌遺残または局所再発例は2例(11.1%)であった.再発例は経肛門的切除でリンパ管侵襲陽性であり,追加切除を施行して再発はない.sm癌でリスクファクター陽性例には経仙骨的あるいは経括約筋的切除が望ましいと判断される.